『カーブドッチブルーイング』醸造家・草野さんに聞いた、ワイナリーが造る新しいクラフトビールのかたち。

ビールを超えた美味しさ!ワイナリーが本気で造るビールは、常温でゆっくり飲むのも楽しい新感覚。気鋭の醸造家に特別インタビュー!

ブドウの絞りかすも使った、香り高いビールが誕生。『カーブドッチ』が手がける、ワイナリーならではの味わいとは?

新潟で話題の銘醸地、ワインコースト中心をなす『カーブドッチ・ワイナリー』。気鋭の醸造家・掛川史人さんのもと、“どうぶつシリーズ”や“FUNPYシリーズ”など、日本ワインの概念を覆すような銘柄をつぎつぎ誕生させてきました。そんな『カーブドッチ』から、wa-syuが新しくセレクトするのは、日本ワインではなくクラフトビール。なぜワイナリーがビールを造るのか?またその味わいとは…?11月に行われた『wa-syu』角打ちイベントのゲスト、ビール醸造部門『カーブドッチブルーイング』責任者の草野竜征(くさのりゅうせい)さんからお話を聞きました。

ナチュラルワインから入って、ワイン好きになった29歳。オーストラリアから日本に戻って、ワイン醸造に再チャレンジ

弱冠29歳で、ビール部門の醸造責任者を任されている草野さん。
「出身は鹿児島なのですが、佐賀県で大学に通っていたころにワインバーでアルバイトをしていて、ワインにハマったんです。そこはナチュラルワインをたくさん置いているバーで、海外の生産者もゲストとして立ち寄ることもあり、だんだん醸造のほうにも興味を持つようになりました。大学では化学を専攻していたのですが、まあ若かったので、卒業後は勢いでオーストラリアに渡りました。向こうでワインを造るんだ!行けばなんとかなる!って息巻いて行ったのですが、案外行ってもなんとかならなくて(笑)。言葉もわからなくて、これはいけないなと思って、日本に帰ってもう一度ちゃんとチャレンジをしよう、と決めたときに知り合いに紹介してもらったのが『カーブドッチ・ワイナリー』だったんです。醸造責任者の掛川が、まあいいんじゃない、って受け入れてくれて。成田に到着して、キャリーバッグを引いて、そのまま新潟に直接行って、仕込みに合流したのが、2019年9月でした」。

実は約20年の歴史がある、カーブドッチ・ワイナリーのビール部門。担当者が不在になって存続の危機に!

『カーブドッチ・ワイナリー』では2002年からすでにビールを造っていたそう。「ワイナリー自体は1992年創業ですが、新潟にワインリゾートを作る、という大きなビジョンを持っていたので、レストランやウエディング施設なども作り、他にも何かコンテンツを…と考えたときに、当時ブームだった地ビールと自家製ソーセージの工房を始めたようです。そのまま約20年、同じレシピでクラフトビールを造り続けてはいたのですが、外に売ることもなく、会社の中でも目立たない存在だったんです。
さらに僕が掛川についてワイン造りを学んでいた2020年ごろは、当時のビール醸造担当者が温泉部門のボイラー担当も兼任しており、温泉の仕事が忙しくてビールが造れない、っていう状況になっていて。数年間、生産も途切れがちで、このままだとビールの製造免許を返納しなきゃいけないけれどどうする?もう止めちゃおうか?というところまで来ていたんです」。

ワインから発想した、新しいビール造りのアイディアが採用されて。

「たまたま、僕は普段から趣味でクラフトビールを飲んでいたんです。“最近のクラフトビールって、ワインの樽を使ったりワインの絞りかすを使ったりしているのもあるんですよ、ウチもやらないんですか?”って話をしていたら、“じゃあ君がやる?”って掛川に言われて(笑)。新しいチャレンジができるんだったらいいなと思って、2021年から醸造責任者として、ビール造りに着手することになりました(草野さん)」。ワインの仕込みやブレンドでも重要なポジションを任されるようになり、自身で手がけるワインの銘柄も増えていた草野さん。多忙な中でのビール醸造のスタートでしたが、「せっかく新たに始めるのだから、コンセプトから一新したいと思ったんです。レシピを研究して、名前を変えて、ロゴもデザイナーに新しく作ってもらって。「Croix(クロワ)」というブランドとして、2023年より発売することができるようになりました」。

新ブランドは「Croix (クロワ)」。味わいも楽しみ方も、普通のビールとはひと味もふた味も違う!

カーブドッチが造るビールは、見た目からも普通のクラフトビールとは異なります。使っているのはワイン用の750mlボトルで、ラベルもスタイリッシュなモノトーンの、エッジの効いたデザインです。「ウチのビールは、絶対にワインみたいにワインボトルで飲んだほうが美味しい。みんなでシェアしてゆっくりと飲んで欲しいですし、セラーで熟成してもらってもいいと思うんです。ブランド名の『Croix (クロワ)』は、フランス語でクロス=交差を意味し、ワインとビールの文化が交差しているイメージです。飲むときも、ぜひワイングラスを使って、香りや味わいを楽しんでもらいたいですね(草野さん)」。

樽発酵、樽熟成に挑戦したビール「Croix Elevage 2022」は、6カ月の熟成を経て瓶詰め

wa-syuがセレクトしたのは2種類の銘柄です。まず、「Croix エルヴァージュ」は、ビールなのに樽の香りが楽しめる逸品。アルコール度数も6.5度なので、気軽に飲めるのも良いところです。「エルヴァージュとはワイン用語の一つで、樽の熟成とか、ワインの熟成を意味する言葉。実際にビールを樽で発酵、熟成させています。白ワインを熟成させていたフレンチオーク樽と、うちで作っているブランデー「オー・ド・ヴィ」を熟成させていたフレンチオーク樽を使って、6カ月間樽熟成。出汁に合うビールだという評価もいただいているので、割烹料理などと楽しむのもよいと思います(草野さん)」。

Croix Elevage 2022/3,520yen(税込)

「Croix Albariño 2022」は、アルバリーニョの絞りかすを活用した、美味しくてSDGsなクラフトビール(発泡酒)

もう一つの「Croix アルバリーニョ」は、ワインを造るときに出てきた、アルバリーニョの絞りかすを醸造過程で再利用。アルコール度数は4%とライトですが、まるでワインのような味わい。アルバリーニョそのものの香りや酸味も感じられます。
「2022年にカーブドッチの自社畑で栽培、収穫されたアルバリーニョの果皮を原料に加えて、ブドウに付着していた自然酵母で発酵させています。その後、熟成タンクで9ヶ月間熟成させています。ブドウの状態が大きなファクターになるので、ワインのようにヴィンテージで違う味になってくる、面白いクラフトビールです。酸がしっかりしているので、ビストロの料理などにもピッタリです(草野さん)」。

Croix Albariño 2022/3,520yen(税込)

ワインのように、豊かな時間を分かち合うことのできるビールが「Croix」。これからの進化も楽しみ!

「今後ビール醸造で取り組み始めているのは、瓶内二次発酵のもの。シャンパーニュのように、より熟成が進んで美味しくなっていくものとか、泡がなかなか消えずに長く楽しめるものとか、そういう銘柄に取り組んでいきたいですね。また、ブドウの果皮を使ったシリーズもいろいろとチャレンジしていきたいです。『カーブドッチ・ワイナリー』の人気ワインで、「どうぶつシリーズ」の「みつばち」とか「くま」を仕込んだ後のシュナン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンなどのプレスが終わった果皮をもらいに行って、これを使って仕込みを始めたり。それまでは土に返したり、廃棄していたものが再利用できるうえに、すごく面白いものができる。これからもいろいろな品種や手法を使って、より“ワインのような楽しみ方”ができる、美味しいビールを造ってみたいなと思っています(草野さん)」。

カーブドッチブルーイング
新潟県新潟市西蒲区角田浜1645:株式会社まき小屋

『カーブドッチブルーイング(CAVE D’OCCI BREWING/かーぶどっちぶるーいんぐ)』は、新潟「カーブドッチ・ワイナリー」が手がけるクラフトビールブランド。ビール醸造責任者の草野竜征(くさのりゅうせい)氏がワイナリーならではのビール造りに挑戦しています。2019年にワイン醸造研修生としてカーブドッチに入社した草野氏は、ブドウ栽培とワイン醸造を担当し、人気シリーズのファンピーやサブルのブレンドも担当。醸造責任者、掛川史人(かけがわふみと)氏のもとワイン造りをおこないながら「カーブドッチブルーイング」を立ち上げました。そのビールはカーブドッチのワインと同じく華やさと軽やかさ、緻密さが特長。ワインのある暮らしの素晴らしさを誰よりも感じているカーブドッチが、ワイナリーだからこそ作れる、豊かな時間を演出するビールを生み出しています。

▼「カーブドッチブルーイングのアイテムリスト」はこちら 

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