LE VIN NATURE フランソワ・デュマさんと紐解く、ナチュラルワインのこれまで、これから。

ワインをめぐる、知の旅へ。wa-syuバイヤーの菊地良実が、ナチュラルワインを日本に紹介したキーパーソン、フランソワ・デュマさんにインタビュー!

「ビオワイン」から「ナチュラルワイン」へと言葉は変わったけれど、本質は変わらない。"何も加えない"ことがナチュラル。

wa-syu・菊地良実:デュマさんは『LE VIN NATURE(ル・ヴァン・ナチュール)』という会社でフランスのナチュラルワインを日本に輸入するお仕事をしているほか、山形県のワイナリー『GRAPE REPUBLIC(グレープリパブリック)』で、自らワインを醸造しています。いわば、ナチュラルワインを知り尽くした存在。改めて、"ナチュラルワイン"というものは何なのか、どう考えているか、聞かせてください。
フランソワ・デュマさん(以下、デュマ敬称略):"ナチュラルワイン"というのは、けっこう最近の言葉なんです。耳にするようになって、まだ20年も経っていないと思います。それ以前にはオーガニックワインとか、ビオワインと呼ばれているものがあったのですが、これは主にブドウ栽培に関することで、有機栽培や無農薬栽培などに目を向けているものでした。1980年代になってテクノワインが出始めたころになってはじめて、酵母を添加しないものや、亜硫酸塩を減らしたものなど、より自然な醸造のスタイルを持つワインが登場してきました。でも、私が考えるナチュラルワインは、「ブドウを絞っただけで、何も入れていない」もの。ただそれだけなんです。でも、それは本当に限られた本数、限られた流通でしか飲むことができない。でもナチュラルワインの需要は高まる一方ですよね。だからいろいろな形が生まれるし、ちょっと混乱するんです。
菊地:デュマさんとナチュラルワインとの出会いは、どのようなものだったのですか?
デュマ:ナチュラルワインをフランスから輸入する会社をスタートさせたのは、1997年のこと。あるとき私は、フランスのシチュアシオニスト(※1)であるギー・ドゥボール(※2)が書いた、"これからは全てがテクノワインになってしまい、昔ながらのワインがなくなってしまう"という一文を読みました。当時は音楽関係の仕事をしていたのですが、その日のうちにスパッと辞めて、ワインの輸入を始めたんです!ともかくナチュラルワインを救いたかったので、当時は"ビオワイン"と呼ばれていましたが、1,000本単位から輸入を始めたんです。私はパリの出身ですが、もともと父がワイン好きで、バカンスには家族でワイナリーのある地域に旅行したり、毎年ワインを1樽買って、家に届けさせていたりした。子どもの時から家で、樽からビン詰めしていたんですよ(笑)。日本で音楽関係の仕事をしていたころも、ワインは仕事とは関係なく好きで飲んでいただけなのに、家に300本くらいありました(笑)。

※1:シチュアショニスト・インターナショナル:ギー・ドゥボール、ラウル・ヴァネイジェムなどにより、前衛的なアートや社会活動の形で主に1960年代後半にムーブメントになった。のちのパンク・カルチャーにも影響を与えたと言われる。
※2:ギー・ドゥボール:フランスの著述家、映画作家。シチュアショニスト・インターナショナルの創立メンバーで、1994年没。

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菊地:1997年というと、まだ日本ではほとんどビオワインは浸透していなかったですよね?フランスではどうだったのでしょうか?
デュマ:フランスでもみんなナチュラルワインの悪口ばかり言っていました。ほとんど飲めたものじゃないとか、まずいとか。でも、「ナチュラルワインだから美味しい」とか「ナチュラルだからまずい」とかいうのはおかしいですよね?ナチュラルでも美味しいのもがあれば、まずいものもある。だから美味しいのを1回飲んだら、判ってもらえると思いました。フランスでは、浴槽に氷とオーガニックシャンパンをいっぱい入れて、その日はみんなセルフサービスで飲んでもらうようなパーティーもしました(笑)。次の日になるとみんな、"あれ?二日酔いにならない!"とか"体に負担がない"とか気づいて。そういうことから少しずつ飲む人が増えてきたと思います。でも最近では、ナチュラルワインは流行しすぎましたね。ファッションになってしまっている。今では、ブドウだけ有機栽培だとか、少しだけ亜硫酸塩を入れたものとか、ブドウは有機栽培じゃないけれど酵母は野生酵母だとか、そういったものが全てナチュラルワイン、って呼ばれていますね。すごく混乱した状態だと思います。
菊地:たしかに、それぞれの造り手さんごとに立ち位置もちがいますし、これがナチュラルだ、と一概に言えないですね。
デュマ:問題は、ナチュラルワインがブームになりすぎていること。お客さんはみんな欲しがっている、でも全然供給が追いつかない。だからみんな、これもナチュラルだ、これもまあナチュラルだ、と言って売るようになったのだと思います。フランスでも、ビオワインバーとかがあるけれど、ビオでもなんでもないものを出してるところもありますよ(笑)。"ナチュラル"だとか"自然派"というとお客さんが来ますが、果たしてこれは自然派なの?と思ってしまうことも多いのです。
菊地:ナチュラルが人気で、みんなが欲しがってることは確かですね。
デュマ:ビジネスのためではなく、情熱のため、未来のためにワイナリーを始める人が増えているということも、人気の要因かもしれません。若い人はみんな有機栽培をやりたがっていますよね。ブドウの栽培にこだわったり、昔の品種をよみがえらせようとがんばっている人も多い。また、オーストラリアやフランス、イタリアなど世界中で一生懸命ナチュラルワインを学んで、日本でも同じことをやりたいと言って戻ってくる人も増えています。だから日本ワインもますます面白くなって、面白い生産者が増えていくと思います。だからお客さんも、飲んでみたい、と思うんでしょうね。

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本当にワインを造っているのは誰なのか。ワイン自体はシンプルな存在、でも状況を複雑にしているのは人間?

菊地:逆に、ナチュラルワインのブームの問題点とはなんでしょうか?
デュマ:亜硫酸塩を使っていない=ナチュラルワインだ、と思っている人も多いですよね。たとえば、100万本も生産するワインなのに"亜硫酸塩を使っていません、品質も一定です"というのはかなり不自然。本当はできないことなのだけれど、テクノロジーがそれを可能にしてしまっているんです。ブドウジュースのようなものを一度80℃まで熱してバクテリアを殺し、亜硫酸塩は入れずに他の添加物を入れてワインにする、ということも可能です。でもそれはナチュラルワインと呼べるのでしょうか?そういった無知や誤解が、物事を複雑にしているのは問題だと思います。あと、ナチュラルワインに限らず日本ワインのブーム全体についてですが、今ワイナリーがどんどん増えていて、小さいワイナリーもすごく多い。そういうところは熟成期間もあまり取れなくて、出来たワインを売り切るようなところも多いです。でも、10年は大丈夫でも11年目に不作になったら? 急に虫や鳥の被害に襲われたら? 売るものがなくなっちゃう。そんな時のバッファーを取ってないところがすごく多い気がします。それもブームで心配なところですね。
デュマ:ところで、ワインって、誰が造っていると思いますか?
菊地:…?醸造家でしょうか?
デュマ:いいえ、実は、ワインは飲む人が造っているんです。誰も飲まないワインは、造られることがない。お客さんが欲しいと思うから、ワインが造られるんです。だから添加物がたくさん入っているテクニカルなワインも、お客さんが欲しがっているから造られる。ナチュラルワインは難しい、と言いましたが、本当に難しいのは、実は飲む人間のほうなんです。ワインは何も難しいことがない。キレイなブドウを絞ったらそれで終わり。だから歴史が長いんです。8000年の昔、ワインが誕生したころは、顕微鏡なんかなかったですよね(笑)。昔はビオワイン、今はナチュラルワインとか呼ばれていますが、これからは単なる"ワイン"になっていけばいいんじゃないかと思う。ただ、美味しいワインと美味しくないワインがあるだけ。本当のナチュラルワインがあった8,000年の昔に、戻ればいいと思うんです。

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日本ワインの歴史を変えた、2005年のフランスへの旅。若き醸造家の卵たちが、ナチュラルワインを知った日の目撃者に。

菊地:デュマさんは、いま日本ワイン界で活躍している名だたる醸造家と交流があると聞いています。かつてみんなでフランスに行って、ナチュラルワインの醸造を見学したというのが、伝説のように語られていますが…。
デュマ:それは2005年のフランスへの旅のことですね。そのころはよく『ココ・ファーム・ワイナリー』に行っていて。もともと、日本のワイナリーをいろいろと回っていたんですが、特に『ココ・ファーム・ワイナリー』は世界でも特別な、障害がある生徒さんたちのための施設を母体としてワイン造りをしているところ。その、ビジネスではない"シェア"の精神に感銘を受けていました。当時はブルース(ブルース・ガットラヴ氏。現在は北海道で10Rワイナリー主宰)もいて、ワインを志す若い人が集まっていて学校みたいでした。年に何回かみんなで勉強会をやっていて、日本のいろんなワイナリーに行ったり、畑を見学したりして、品種や土のこと、剪定のことなどを情報共有しあっていました。それで、フランスにも見学に行こうということになって、私がコーディネーションをしたんです。ブルースが大きいメーカーにアポイントを取って、私が小さいナチュラルワインのメーカーを案内して。シャンパーニュとかロワール地方に、バスで行ったんです。タカヒコ(曽我貴彦氏。ドメーヌ・タカヒコ主宰)がいたし、ブルースがいたし、佐々木賢さん(農楽蔵の栽培家)とか、記者の鹿取みゆきさんとか、たくさんの人が行ったんです。旅のあとみんな「ナチュラルワインをやるぞ!」って盛り上がっていました(笑)。
菊地:すごいメンバー! 日本ワインの重要人物がたくさん参加してたんですね。その旅はやっぱり、かなり大きなムーブメントを担ったのではないでしょうか?
デュマ:この旅の前と後では、やはり日本ワインの歴史は大きく変わったと思いますね。ナチュラルワインの潮流はもっとあとで自然にやって来たかもしれないけれど、がらりと変わったのはやはり2005年の旅があったからだと感じています。

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『GRAPE REPUBLIC』に委託醸造した、オリジナルのワイン。ブドウを絞ってアンフォラを使い、何も加えない本当の"ナチュラル"。

菊地:デュマさんは輸入業に加えて、自ら醸造した日本ワインもリリースしていますね!
デュマ:委託醸造で『GRAPE REPUBLIC(グレープリパブリック)』と取り組んでいます。私の造るワインは、本当にブドウを絞っただけのシンプルなもの。本数は限られていますが、酵母も添加していないし、澱を下げる添加物も亜硫酸塩も使っていません。そのためには、良いブドウが必要。ワインはセラーではなく、畑で作られているんですよ。あと『GRAPE REPUBLIC』は、ワインの発祥の地と言われるジョージアと同じように、アンフォラを地中に埋めて使っているので、自然と温度管理もできているんです。

※左から3番目の画像はイメージです。2020ヴィンテージは完売しました。現在の取り扱いは、2021ヴィンテージです。

写真左から:
M & M Assemblage 2019/5,500yen(税込)
Fermented on skin in Amphora 2020/SOLD OUT
Fermented on skin in Amphora 2021/5,500yen(税込)

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デュマ:『Foxy Ladies 2020』は収穫を手伝った時にあったのが、偶然ナイアガラ種とデラウェア種だったのでそれを使って。両方ともアメリカのフォクシー・フレーバーのある品種だったので、大好きなジミ・ヘンドリックスの曲『Foxy Lady(フォクシー・レディース)』から取って名付けました。でもこれはそんなにフォクシーじゃないですね(笑)。デラウェアのような生食用ブドウは、ワインにすると何かが足りない感じがします。例えば、シャインマスカットはワインができないんです。食べるのは美味しいけれど、酸味も足りないし、糖分も足りない。食べると甘く感じるけれど、水分も多いのでアルコールにするには糖が足りないんです。デラウェアも、やっぱり味が足りなくて、そのままではシャブリとかシャルドネみたいに美味しいワインにはならない。けれども、赤ワインのようにスキンコンタクトするとタンニンが出て、面白い味のオレンジワインになるんです。
菊地:瓶詰めまでの熟成期間も、デュマさんが決めるんですか?
デュマ:そうです。ほら、こういうビオディナミの暦があるんです。アプリにもなってる。昔の農家は、みんな作業予定をこうした月の満ち欠けの暦で決めていたんですよ。例えば7月○日は瓶詰めの日などと決まっていたりするから、だいたいこの暦に沿って作業します。例えばフランスでは、昔から満月の日には絶対に瓶詰めしないのが当たり前なんです。子供から年寄りまで、みんなの生活の中に生きているリズム。ブドウ栽培だけでなく、猟師もイノシシはこういうときには危ないとか、月の暦に合わせて動いています。日本にも昔からあるでしょ?
菊地:たしかに! 節句とか節気とか、こういう日には動かないほうがいいとか。かつては日本人も、もっと暦に沿って生活していましたよね。
デュマ:新しい言葉で"ビオディナミ"などと言うけれど、昔からの暦と知恵に従っているだけです。ただし、水晶を畑に撒くとか、そういうのはやりませんけれど!

Foxy Ladies 2020/5,500yen(税込)

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菊地:こちらの2本はどんなワインでしょうか?『M & M Assemblage 2019』は、チョコレートのお菓子のイメージですよね!
デュマ:この赤は、メルローとマスカット・ベーリーAのブレンドで、頭文字を取って「M & M」。実はマスカット・ベーリーAはフランスにはないので、私には馴染みがない味なんです。そのせいか、ちょっと時間を置いた方が美味しく感じます。もう一本の『Fermented on skin in Amphora 2020』はデラウェア100%のもので、最後に収穫した熟したデラウェアを使っています。糖度が高くなっているので、自然な造りで加糖しなくても13%までアルコール度は上がりました。やっぱりデラウェアは、スパークリングか、スキンコンタクトしたオレンジワインが合っていますね。アンフォラでフィルターはかけていませんが、濁りはないでしょう? しっかりと澱を下げて瓶に詰めれば、無理なくキレイなワインが造れるんです。これはデリケートですごく優しい、好きな味なので、毎年続けていきたいですね。
菊地:ラベルデザインはどれも浮世絵師、河鍋暁斎(かわなべきょうさい)の絵から取っているんですよね。ガイコツがギターを弾いているような、すごいロックなイラストだなと思ったんですが…。
デュマ:一見ギターみたいですが、実はガイコツが三味線を弾いてるんです。面白いですよね! ラベルと言えば、レストランとかワインショップは、ワインを立ててラベルを見せているところが多いですよね。でもナチュラルワインはいつも寝かせておいて、液体とコルクが接触している状態にしないとダメ。そうでないとコルクが乾燥して隙間から空気が入り込み、ワインが劣化しててしまいます。また、暑いところに置いてあったり、直射日光に当たっていたり…。ナチュラルワインは、やはり添加物がないぶん、弱いんです。あと、ワインセラーを冷蔵庫代わりに使っていて、"ネギ"とか書いてあるダンボールが置いてあったりするのも見ます(笑)。ワインと野菜を一緒に入れていたりするのも絶対ダメです。
菊地:デュマさんの事務所にはワインがたくさん置いてあるけれど、常にかなり冷房を効かせていますよね。
デュマ:年間を通して17℃に設定していて、セラーは12〜13℃。これくらいで保管しないとワインがかわいそう!生産者だけがワインを造っているわけではなくて、販売する人やレストランも、一緒にワインを造っているわけです。劣化を誘うような状態で販売されたワインを飲んだ人が、これがナチュラルワインの味か、と思ってしまったら大変です。ナチュラルワインは、値段も決して安くはないのだから! ブドウ栽培の時から手を掛けて、それでも鳥が来て食べちゃったり、イノシシを防ぐのに電気柵を設置したり。ブドウを収穫する手間や人件費。そして輸送のコストや保存の状態を考えたら、日本で安いナチュラルワインというのはあり得ないんですよね。
菊地:合わせる料理は何がおすすめですか?
デュマ:"美味しいもの"です(笑)。マズいもの以外(笑)。好きなものと合わせればいいと思います。『Foxy Ladies 2020』は日本料理にぴったりですし、蕎麦とか魚料理とか野菜料理とか。好きだったらデザートでもいいですし。チーズもいいですね。タンニンがあるから幅広いと思います。『M & M Assemblage 2019』はタンニンがすごく優しいので、野菜を炒めたもの、ハーブ、赤ワインソースの魚とかもよいと思います。

M & M Assemblage 2019/5,500yen(税込)

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ワインを知りたいなら、美術館やコンサートへ足を運び、本を読むべき。そして酔っ払って、草の上で眠るべき。

菊地:ところで、デュマさんが日本に来たきっかけは?
デュマ:子供の頃から旅が好きで、アフリカやヨーロッパ、アメリカも旅しました。大学生のときにスカラシップが来て、どこに行きたいか、ということになって、京都大学が選べたんです。日本は小津安二郎の映画などが好きだったので、興味があった。その頃は日本に旅行するのはすごくお金がかかったんです。建築学、地理学、エコロジーを学んでいたので、北海道から沖縄まで、日本の古い民家の建築を調べながら旅をしたのが1979年ごろ。1981年にフランスに戻ったあと、マサチューセッツ工科大学に行くことが決まっていたんですが、ちょうどそのときラジオ局の設立メンバー、プロデューサーとして携わることになって。音楽関係の仕事も始めました。
菊地:建築からラジオ局、音楽ですか。ワインとはあまり関係ないですね(笑)。
デュマ:そうなんです(笑)。その後、1982年くらいから日本と行ったり来たり。海外の音楽やアーティストを紹介したする"呼び屋"とか、ライター、DJイベント、クラブのデザインなど、主に音楽に関わる仕事をしていたんです。フジロックフェスティバルを主宰しているSMASHと仕事したり。けれども先ほど言ったように、'97年に仕事をすっぱり辞めてワインの道へ。ワインは深く知れば知るほど、知らないことが多いということに気づきます。サイエンスであるけれど、同時にサイエンスではないんです。1万年くらい前、人間はアルコールを飲むことができるようになって、そこから知恵や文化、哲学、文学が出てきた。だから、ワインをもっと知りたいという人には、美術館やコンサートに行って下さい、本を、詩を読んで下さい、といいます。ひたすらワインのことだけを勉強するとか、そういうアプローチではだめなんです。楽しくないといけない、遊びが一番の勉強。私の人生で最高の瞬間は、いっぱいワインを飲んで、外に行って満天の星を見る、酔っ払って草の上で寝てしまう…。そんな瞬間です。人生の中でそんなことを、1回はやってもいい。毎日ではないですよ(笑)。そういうことがないのは寂しい人生です。
菊地:次にやってみたいことは何でしょうか?
デュマ:以前やっていてコロナ禍で中断してしまった『フェスティバン』というナチュラルワインのイベントをまた、違う形で考えてみたい。食や音楽、ライフスタイルを含めた形で…。あと、日本のナチュラルワインの生産者やオーガニックの栽培家、ビオディナミの実践者みんなで、情報共有できる場をつくりたいです。それと、今の人生ではずっと動き続けているので、来世は…石になりたいです(笑)。

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PROFILE
フランソワ・デュマ(Francois Dumas)
LE VIN NATURE代表取締役

[名称]LE VIN NATURE(ル・ヴァン・ナチュール)株式会社
[住所]東京都港区南麻布

日本でビオワイン、ナチュラルワインを本格的に始めた第一人者の一人。これまでPierre Overnoy、Claude Courtois、Mark Angeli、Andre Beaufort、Christian Ducroux、Domaine Arretxea、Barranco Oscuroなどを輸入。1997年よりフジロックフェスティバル、2010年よりFESTIVINなど音楽フェスティバルやワインイベントにも積極的にかかわっています。現在は、長野や山形でワインの委託醸造も続行中。

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