広島初のワイナリーとして誕生。重要な観光の拠点でもある複合施設!
広島県で初めてのワイン醸造所としてスタートした『広島三次ワイナリー』。海外からも評価される、こだわりのワインをリリースしている注目のワイナリーです。広島県の中山間部である三次市で、重要な観光の拠点としてスタートしました。ワイナリーだけでなく、さまざまな複合施設としての機能を備えています。今回、ワイナリー長の太田直幸(おおたなおゆき)さんにお話を伺いました。「この地域は中国山地の南側にあり、瀬戸内海からも日本海からも同じくらいの距離があるところ。大きな河が3本くらいあり、水が豊富な地域です。もともと米作りが盛んなエリアでしたが、1960年代頃にブドウ栽培が始まり、その後生食用ブドウである「ピオーネ」の栽培が盛んになりました。1974年には「三次ピオーネ」として生産組合も誕生。さらに農家の所得向上や、少しずつ6次産業化しようという動きもあり、ブドウの加工用途を模索していたんですね。そんな中で、生食用として出せないブドウでワインを造って販売しようという構想が生まれました。当時の市長が中心となり、三次市とJA、地元企業の共同出資で、ブドウ農家さんも株主として参画してもらい、ワイナリーが誕生。それが1994年のことです。もともとは生食用のブドウしかなかった地域なのですが、比較的早くワイン用のヨーロッパ系品種の栽培を試みていた人もいて、ワイナリーがオープンする時点で、すでにシャルドネやメルローも収穫できる状態になっていて、買い入れることもできたそうです(太田さん)」。
ニュージーランドで暮らした15年間で、ワイン造りの理論と実践をたっぷりと学んで。
現在の『広島三次ワイナリー』は、ワインを製造するだけでなく、物産館やバーベキューガーデン、カフェなども併設している複合施設。その役員でもある太田さんは、2013年にこの地にやってくる前には、ニュージーランドで15年間も暮らしていたそう。「20代の後半からニュージーランドで暮らしていたのですが、その間にワインと出会って。30代にはニュージーランドのクライストチャーチの近くにあるリンカーン大学(農業、特にワイン醸造の研究で世界的に有名な大学)で、醸造と栽培を勉強して、農園やワイナリーでの仕事をしながら、理論と実践を積み重ねてきました。そこには、アメリカやカナダ、ヨーロッパやアジアなど、さまざまな地域の人たちがワインの勉強をするために来ていたんですね。彼らからそれぞれの国のワイン事情を聞いたり、一緒にテイスティングの会やフィールド・トリップなどもする機会を通して、ワインに対する考え方に触れることもできました。そんな環境で学ぶ中で、一口に醸造といっても、ニュージーランドのやり方だけでなくいろいろな考え方や方法があるということも知って。モダンワインメイキングといいますか、きちっとした科学的根拠をもとに、ワインのスタイルを組み立てていくということが必要なのだなと感じるようになりました。今でも"日本ワインなら何でもいい"ということではなく、やはり美味しいワインを造らなくては意味がない、そういうふうに考えています(太田さん)」。
写真:広島三次ワイナリーワイナリー長・太田直幸さん
農業だけでは終わらない、ワイン造りの流れに魅了されて。
実は、太田さんがニュージーランドに渡ったときに興味を持ったのは、ワインそのものではなく、農業の方だったのだそう。「いろいろな農家さんに話を聞いたりしているうちに、たまたま働くことになった農園が、ワイン用ブドウの畑だったんです。それまでワインは辛うじていくつか品種を知っているくらいで、白は白、赤は赤、という感じでたまに飲むくらい(笑)。それが、自分が頑張って育てたブドウがどうなっていくのかな?という興味から、醸造まで流れで見せてもらえるようになって、知れば知るほど面白いなあ、と。農業から入ったのですが、農業だけで終わらないところに魅了されて、ワインの世界で生きるようになった形です(太田さん)」。もともとは大阪の出身だという太田さんですが、日本に帰国してからは、奥様の出身地である広島や、自身の地元である西日本でワイナリーの仕事を探したそう。「ワイナリーはやはり山梨や長野、東北や北海道に多いのですが、ちょうど三次でも醸造や栽培に力を入れたいということで、声をかけていただいて。ニュージーランドに住んでいたときは、家から家のゲートに新聞を取りに行くまで車で2分くらいかかるような場所だったので(笑)、こちらはにぎやかなところだなと感じましたね(太田さん)」。
お土産用のワインから、本格的なワイン造りへ。『TOMOÉ(トモエ)』ブランドが遂に誕生!
1994年にオープンした『広島三次ワイナリー』。けれども、国内外から評価されるような本格的なワイン造りが始まったのは、2013年に太田さんが醸造長として参画してからのことです。「私が来るより前に造られていたワインは、いわゆる"お土産もの"の甘口ワインが多かったようです。実はここのワイナリーは、中国自動車道の三次インターに近くて、観光としてはすごく良い場所。ともかくお客さんはすごく多かったので、地元のブドウだけでは到底足りなくて、輸入原料を使うなどでまかなっていたようです。かつては日本産のブドウを100%使った「日本ワイン」という概念も生まれていなかったですし、せっかく来たから何か買おうとか、赤ワインが健康に良いとテレビで言っていたから買おうとか、そういう感じで、わりと何でも売れていた状況がありました。まだまだワイン文化が浸透していなかったんだと思います(太田さん)」。
※左から1番目の画像はイメージです。
写真左から:
VILLAQUA デラウェア/SOLD OUT
TOMOÉ 三次ロゼ/2,090yen(税込)
TOMOÉ ピノ・ノワール 貴腐[375ml](木箱入り)/30,800yen(税込)
TOMOÉ 小公子 マスカット・ベーリーA 2018/3,850yen(税込)
TOMOÉ シラー 2018/3,520yen(税込)
太田さんが醸造に携わるようになったころ、折しも国内のワインは、輸入の安いワインに押されて、本当に品質の良いものにシフトしていかなければならない転換期を迎えていました。「『TOMOÉ(トモエ)』は、三次産のブドウを100%使用。その中でも厳選された品質の高いブドウを、こだわりを持って醸造しています。また『VILLAQUA(ヴィラクア)』も、三次産原料100%を使ったスパークリングワインのシリーズです(太田さん)」。知識や経験をフルに活用し、徹底したこだわりの栽培や醸造によるワイン造りで、三次ワイナリーは驚くほど本格的な味わいに進化。その作品は国内外の数々のコンクールで受賞し、さらに年々評価が高まっています。
ベストな味わいを引き出す醸造方法は、ブドウに合わせた、柔軟な発想から。
豊かな水に恵まれた三次が発信する『TOMOÉ』『VILLAQUA』シリーズは、数々の受賞歴もある人気ブランドへと成長してきました。その影には栽培のみならず、醸造に対するこだわりと努力があります。「この銘柄はこのやり方、と決め込まないで、ブドウに合わせて柔軟に変えていくことがこだわりです」と語る太田さん。「本当に美味しいと思えるワインを造りたい、その1点だけです。私は海外でワインを覚えてきたため、日本のブドウ品種に慣れていなかったこともあって、始めのころは日本固有種などに対して"クセがあってあまり美味しくないな"という印象を持つこともありました。でもそのブドウをいかに美味しく味わえるようにするか、自分なりに醸造やブレンド、熟成の方法などを工夫してきました。大変だけれども楽しい作業でもあり、楽しんで造ることで、同時に評価も上がってきたのは嬉しいことです。今はヨーロッパ系品種であるシラーにしてもメルローにしても、"日本らしい、繊細さのある"ワインとして仕上げていきたいと思っています。広島県は、ワインの産地としてもブドウ産地としてもまだまだ知名度はありません。そんな場所にも、毎年コンスタントに賞を取るようなワイナリーがあるということに驚いてもらいたいです。県内でも、三次ワイナリーは知っていても、いまだに創業当時の甘口ワインを造っていると思っている人はけっこう多い。そんな人が驚いて、喜んで下さるのが、いちばん好きな瞬間ですね(太田さん)」。
▼「広島ワインのアイテムリスト」はこちら
広島三次ワイナリー
広島県三次市東酒屋町:(株)広島三次ワイナリー
広島県内初のワイナリーとして1994年7月創業。広島県一のブドウ産地の三次盆地に位置し、先人の熱い想いとたゆまぬ努力の蓄積により事業を展開。2007年から自社園、専用圃場を確保し、ワイン専用種による「TOMOÉ(トモエ)」シリーズをリリース。三次産100%のブドウによるワイン造りに努め、日本ワインが持つ、繊細な本物の味を伝えることに力を注いでいます。また、三次の風土を五感で愉しめるように、新しい旅のスタイル「三次ワインツーリズム」を提案。敷地内には、「Barbecue Garden(バーベキュー ガーデン)、「Cafe Vine(カフェ ヴァイン)」をはじめ、西日本最大級のワインセラーを完備したワインショップ、三次の特産品や銘菓などを豊富に取り揃えた物産館などを併設し、三次の食と文化を日々発信しています。
▼「広島三次ワイナリーのアイテムリスト」はこちら
ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。
日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材でご紹介!
▼「日本ワインが生まれるところ。」はこちら
RELATED ARTICLE
関連記事
2022.12.21
【クラシックな品種の日本ワイン Vol.2】 今や海外からも一目置かれる日本ワイン。クラシックな欧州系品種のワインも、食通やワイン好きをも驚かせるような、高いレベルのものが登場しています
2022.11.16
【国内外で絶賛された実力派!コンテスト入賞の日本ワイン!】 国内外のコンテストの厳しい審査を経て、見事入賞した銘柄が集結!今の日本ワインの立ち位置を知る上でも、必ず飲んでおきたい名品ばかりです