気鋭の醸造家、大三島みんなのワイナリーの川田佑輔さんが、自社以外でセレクト。いま、日本ワインで選ぶならこの4本

風光明媚な愛媛県の島にある『大三島みんなのワイナリー』の醸造家、川田佑輔(かわたゆうすけ)さん。あえて自社以外の銘柄で、おすすめの日本ワイン4本を選んでもらいました。

世界的な建築家・伊東豊雄さんが、プロジェクトの発案者。それまでブドウ栽培の歴史がなかった瀬戸内の島に、ワイナリーが誕生!

愛媛県今治市の大三島は、瀬戸内海に浮かぶ美しい島。歴史ある大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)などでも知られています。この地に2011年に誕生した『今治市伊東豊雄建築ミュージアム』がきっかけで、建築家・伊東豊雄(いとうとよお)さんは大三島に通うようになり、島に惚れ込むようになりました。その想いは『大三島みんなのワイナリー』に結実。山梨大学で醸造学を学び、数々のワイナリーで研修を重ねてきた川田佑輔さんを栽培・醸造責任者に迎え、島でのワイン造りがスタートしました。2015年、それまでブドウ栽培はほとんどおこなわれていなかった大三島に初めて醸造用ブドウを植栽し、川田さん自身も移住。地元の農家の協力を得て、耕作放棄地を活用するなどしながら、ブドウの栽培に心血を注いできました。2019年の秋には島内に醸造所が完成、現在は、同プロジェクトを通して島で出会った祥子さんと共に、地元に根付いたワインカルチャーを造るべく、夫婦で日々奮闘しています。また柑橘の島らしく、ブドウだけでなく伊予柑や温州(うんしゅう)みかんなどを使った、新感覚の"島みかんワイン"も誕生。他にはない新しいジャンルのお酒として、大きな注目を集めています。

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大三島に移住し、ブドウやワインと共に生活している川田さん。ソムリエ資格も持つ彼が勧める日本ワインとは?

「今回選んだこの4本は、僕がブドウの栽培家・醸造家としてお世話になった、いわば大三島のワインに脈々と流れる師匠たちの想いのこもったワインです。熱すぎる情熱と産地の個性を併せ持ち、海外のワインとは違う「日本ワインらしさ」を感じるワインをセレクトしました。僕自身、大三島でのワイン造りにたどり着くまでに、ここに挙げた方々のほかにも、さまざまな人や師匠たちに巡り合ってその薫陶を受け、それぞれの想いや情熱を受け取って自分のワイン造りの土壌を培ってきました。ワインはお酒の中でも、原料のブドウの産地の個性や、ワインを造る造り手の個性が非常に色濃く反映されるお酒です。それぞれの造り手がそれぞれの情熱や想いを持って、ワイン造りに取り組んでいるのです。日本でワインを楽しむ際、日本ワインと海外ワインとが決定的に違うところは、造り手と飲み手の距離の近さにあるかと思います。そんな造り手の想いや人となり、産地の思い出や畑の景色を想像しながら飲むことで、より奥深くワインを楽しむことが出来ます。そんな出会いを楽しみながら味わえるのは日本ワインならではの面白さではないかと感じるとともに、大三島のワインを飲みながら、瀬戸内の海を感じてもらえるようなワインを造っていけたらと思います(川田さん)」。

写真左から:
甲州 2021/2,420yen(税込)
TOMOÉ シラー 2018/3,520yen(税込)
スパークリングワイン キャンベル・アーリー/2,200yen(税込)
マスカットベリーA 樽熟成 キュヴェ・オギハラ 2015/3,630yen(税込)

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川田さんおすすめ① 醸造家の包容力のある人柄を感じさせてくれる、心地よい酸で柔らかい印象の『甲州 2021』。

「シャトージュンは以前働いていたレストランで扱いがあり、その時に醸造長の仁林さんや、彼の造るワインと出会いました。仁林さんは普段ラフでおおらかな方ですが、ワインに対してはとても情熱を持った方。特にブドウの栽培農家さんに対しては非常に敬意を持って接し、ブドウ農家さんを尊重するワイン造りをおこなう姿には感銘を受け、僕も常日頃心がけるようにしています。甲州のワインは柑橘系の香りに、どんな食事にも良く合う柔らかな味わいが特徴です。その中でもシャトージュンの甲州は、柑橘の香りの中にも洋梨や花梨など甘いフルーツの香り。酸も心地よい酸で、全体的に柔らかい印象。仁林さんのおおらかで包容力のある人柄を感じさせてくれます(川田さん)」。

シャトージュン[山梨]
甲州 2021/2,420yen(税込)

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川田さんおすすめ② おおらかさを持った味わいが西日本の穏やかな気候を感じることができる『TOMOÉ シラー 2018』。

「広島三次ワイナリーさんは大三島からも近く、醸造長の太田さんには、頼れる兄貴として栽培や醸造の技術面等でいろいろなアドバイスを頂いています。以前太田さんが「今の日本ワインは先人達が必死に築き上げてきた土台あってこそで、その先人達をリスペクトし、次に繋ぐワイン造りをしなくてはいけない」と熱く語っていたことがとても胸に響き、ワイン造りに対する熱い思いを伺い知りました。そんな熱い太田醸造長率いる三次ワイナリー醸造チームが造るシラーを、今回セレクトしています。三次ワイナリーは広島の山間部の盆地に位置し、豊富な太陽の日差しと昼夜の寒暖差にも恵まれた、ブドウ栽培においてはとても良い条件がそろった産地でもあります。フルボディタイプのワインが造りづらい西日本の気候の中であっても、シラーらしい凝縮感とスパイシーな香りが表現されたワインに仕上がっています。おおらかさを持った味わいが西日本の穏やかな気候を感じることができ、シラーは大三島でもチャレンジしたい品種です(川田さん)」。

広島三次ワイナリー[広島]
TOMOÉ シラー 2018/3,520yen(税込)

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川田さんおすすめ③ 町全体に立ち込めるキャンベル・アーリーの香りが忘れられない『スパークリングワイン キャンベル・アーリー』。

「宮崎の都農ワインさんは、大学のインターンシップでの研修以来とてもお世話になっているワイナリーです。気候条件で不利な宮崎でもこんなに素晴らしいワインを造っている人たちがいる、という事実は、僕が山梨や長野等のメジャーなブドウの栽培地域ではなく、大三島というブドウ栽培がなされていない場所でゼロから栽培を始めるにあたり、とても大きな後押しとなりました。都農ワインさんと言えばキャンベル・アーリー!8月の仕込みの時期、都農の町全体に立ち込めるキャンベル・アーリーの香り。今でもキャンベルの香りは、あの頃の夏の仕込みに連れ戻してくれます。宮崎の鮮度抜群の刺身と少し甘い醤油を合わせたキャンベルの味わいは今でも忘れられないぐらいの美味しさでした。難しいことを考えず、みんなでブドウの収穫を祝いボトルを空ける。そんな楽しみ方を感じさせてくれるワインです(川田さん)」。

都農ワイン[宮崎]
スパークリングワイン キャンベル・アーリー/2,200yen(税込)

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川田さんおすすめ④ 栽培家の一切妥協がない超絶技巧のベーリーAで造られた『マスカットベリーA 樽熟成 キュヴェ・オギハラ 2015』。

「山梨大学で醸造の勉強をしていた学生時代、授業の無い休みの日には『kisvin(キスヴィン)』の荻原さんのお手伝いに伺わせていただき、ブドウ畑で栽培の基礎や、栽培家として、プロとしての在り方を教えて頂きました。お互いバイク好きで機械いじりが好きということから、荻原さんとは畑ではいつもバイクの話。ブドウ栽培もバイクと同じで結果には必ず原因がある。プロのレースの世界では、誰も気にしないことに気づいて対策できるチームが結果を出すんだ!と教えて頂いた言葉は、今でも僕がブドウ栽培で心がけている言葉です。荻原さんのブドウは一言でいえば超絶技巧!日本の代表品種であるマスカット・ベーリーAは、膨大な知識や経験に裏打ちされた理論によって一切の妥協なく造られます。そんなブドウから造られるワインは、さながらオーケストラ。ベーリーAらしいイチゴのような華やかな香りと、しっかりとタンニンを感じる味わいのピースが一寸の狂いなく重なり合い、立体的な重厚感を感じます。さらに樽の熟成がより複雑実を与えてくれる熟成ワインに仕上がっています(川田さん)」。

シャトー酒折ワイナリー「山梨]
マスカットベリーA 樽熟成 キュヴェ・オギハラ 2015/3,630yen(税込)

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大三島みんなのワイナリー
愛媛県今治市大三島町宮浦:株式会社大三島みんなのワイナリー

大三島みんなのワイナリーは、島の魅力を表現する方法の一つとして2015年11月に設立。えひめ産業振興財団地域密着型ビジネスにも認定されました。ワイナリー代表は、建築家の伊東豊雄(いとうとよお)氏。栽培醸造責任者の川田佑輔(かわたゆうすけ)氏を中心に、2015年に耕作放棄地を開墾しシャルドネ・ヴィオニエを、翌年にはマスカット・ベーリーAを植樹。2017年に大三島産醸造用ブドウを初収穫し、委託製造によるワイン製造をスタート。2019年秋、大三島に自社の醸造所が完成し、今では栽培から醸造までを一貫して島内でおこなっています。大三島を象ったロゴは、日本を代表する著名なデサイナー、原研哉(はらけんや)氏がデザイン。

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品種で選ぶと、日本ワインはもっと楽しい!
ブドウ品種別ガイド

ブドウ品種で選べば、日本ワインがもっと楽しくなる。日本固有種から欧州系品種まで、品種ガイドと、ワインエキスパートおすすめの銘柄を紹介します。

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