ブドウも産出する天下の台所を中心に、美味いものぞろい。近畿エリアのワイナリー

大都市の大阪や奈良には、古くからブドウ産地として有名な地域も。老舗の革新と新進の情熱がせめぎ合い、個性的なワイナリーが際立つ美味いものの宝庫!

100年超えの老舗ワイナリー、都市型の気鋭ワイナリー、にごりワインの先駆者、クラフト感あふれる新規就農型…。いずれも大都市からアクセス可能!

天下の台所として名を馳せ、美食の都として君臨する大阪。その周辺都市にあるワイナリーは、当然舌の肥えたユーザーをも喜ばせる、ポテンシャルの高いワインを産出してきています。大阪府からは、近畿地方で最も古い100年越えのワイナリーであり、日本有数の老舗『カタシモワイナリー』。そして、いまホットな"都市型ワイナリー"を、日本で最初期に設立した『島之内フジマル醸造所』。滋賀県からは、にごりワインの先駆者でもある『ヒトミワイナリー』、奈良県からは新進気鋭のクラフト系『木谷ワイン』がエントリー!

写真左から:
島之内フジマル醸造所/キュベパピーユ 大阪RED 2019年
ヒトミワイナリー/MBA cuvee city farm 2018 エムビーエーキュベ シティ ファーム
木谷ワイン/二本杉農園 白 2022
カタシモワイナリー/K.S.合名山 北畑 デラウェア スパークリング 2019

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意外にも、大阪はデラウェアの栽培面積は、全国3位。日本有数のブドウ産地としての歴史を持つエリアも、都市化の波が押し寄せて。

大阪府はブドウ栽培が盛んで、栽培面積は全国第9位、収穫量全国第8位を誇ります。なかでもデラウェアでは、山形県・山梨県に続いて、栽培面積は全国で第3位。デラウェアは大阪で栽培されているブドウの9割を占めています。デラウェアが多いのは、丈夫で雨にも比較的強いので、温暖な大阪でも作りやすかったということがあるようです。また、伊勢湾台風(1959年)や第2室戸台風(1961年)で、それまで柏原地区などで多く作られていた甲州ブドウ(本ブドウ)は被害を受けましたが、デラウェアは8月ごろには収穫が終わるので台風の影響を受けにくいこともあり、栽培面積が増えたようです。現在でも、大阪や奈良などの周辺都市で造られるワインは、デラウェア種を使ったものが多い傾向にありますが、ワイン用としてはマスカット・ベーリーAなども作られています。ただし、都市化の波を受けたり、輸送手段の発達で他県の果物の流通が増えたこともあり、年々ブドウの栽培面積が減りつつあるのも事実です。100年を超える老舗『カタシモワイナリー』は、昔ながらのブドウ畑の風景を残すべく、さまざまなワインを開発して奮闘を続けています。また『島之内フジマル醸造所』は、農家のブドウを買い支えながら繁華街でのワイン造りを手がけ、都市部と農村を繋ぐ役割を果たす存在。さらに近県には大人気の自然派ワイナリーも登場し、活況を呈しています。

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ワインを造ることは、ブドウ産地を守ることにつながる。造り手のそんな想いを、飲み手の側からも支えたい!

"1914年(大正3年)に創業した『カタシモワイナリー』は、明治初期からブドウの栽培を手がけていた老舗。特にブドウ栽培が盛んな柏原市に位置し、都市化の波にも負けずに自社畑の貴重な古木を守り育て、地場産業としての栽培とワイン造りを発展させてきました。いっぽう気鋭の都市型『島之内フジマル醸造所』は、もともとは海外のワインを取り扱っていた会社が設立。大阪府内でブドウの生産量が減り、耕作放棄地が目立ってきたことを受けて2010年からブドウ栽培を手がけ始め、2013年にはワイナリーを併設したレストランを大阪のど真ん中に完成させました。近県のワイナリーも見逃せません。『ヒトミワイナリー』は、無濾過のワインを"にごりワイン"として発売した先駆者。また、デラウェアの産地を背景にナチュラル系ワインを手がける『木谷ワイン』も新進ワイナリーとして大きな話題になっています。成り立ちや歴史は違えども、近畿エリアのワイナリーに共通するのは、ブドウ栽培地を守ったり、ナチュラルな造りを次世代に繋げていこうとするサスティナブルな姿勢。そして、美味への飽くなき追究です。ぜひ近畿地区のワインを味わって、そんな造り手の熱い想いを支えてみませんか?

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にごりワインが認知されるようになった立役者、滋賀『ヒトミワイナリー』。

まだ日本で"ナチュラルワイン"という言葉も浸透していなかった頃から、無濾過・無清澄の自然な造りのワインをいち早く手がけてきた『ヒトミワイナリー』。それまで市場になかった"にごりワイン"にチャレンジし、新たな道を切り拓きました。発売当初は、澱を残したワインを見たことがなかった人からの、クレームや返品などもあったそう。今では、So2は使わず、自然な醸造を心がけていることと、比較的生産規模も大きく価格も抑えめなことから、大人気となっています。滋賀県東近江市は、関西のほかの地域に比べると若干降雨量が少なめなのが特長。また40年ほど前からマスカット・ベーリーAを育ていていた地域でもあり、古い木の果実も手に入るというメリットがあります。現在は栽培醸造家・石本隼也(いしもととしや)さんを中心に、自社畑では極力農薬は使わず、使う場合も有機のみでブドウ栽培をしています。

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ヒトミワイナリー

[名称]ヒトミワイナリー/株式会社ヒトミワイナリー
[住所]滋賀県東近江市山上町2083
[営業時間]11:00〜18:00
※月曜・木曜日定休
※研修日・年末年始は定休
※詳しくは、ヒトミワイナリーのウェブサイトまたはワイナリーまでお問い合わせください。

[概要]琵琶湖の南、紅葉で有名な滋賀県東近江(旧永源寺町)に位置する、「にごりワイン」の専門メーカー。1984年当時アパレルメーカーの社長だった創設者・図師禮三(ずしれいぞう)氏は本当に自分のやりたいことをやろうと、大のワイン好きだったことから独自のワイン造りをしたいと思い立ち、全くのゼロからのスタートで自社農園のブドウ畑やワイナリーを設立。1991年にヒトミワイナリーが正式にオープンしました。「ワインを美味しく楽しくお届けしたい」と手造り、手詰め作業でワインを造っています。ワイナリーの敷地内には、天然酵母パンをはじめハード系のパンを中心とする「パンの匠 ひとみ工房」を併設。素材を楽しむ「にごりワイン」に負けないよう、小麦本来の味わいがしっかりと楽しめる手作りのパンを製造しています。

たこ焼きに合わせるワイン? 大阪のワインの代名詞として親しまれている老舗中の老舗は、新しい挑戦も忘れない『カタシモワイナリー』。

『カタシモワイナリー』は、1914年(大正3年)から続く由緒あるワイナリー。大正時代に建てられたワイン貯蔵庫は、国の登録有形文化財に指定されています。明治初期にブドウ畑を開拓しはじめ、日本酒の醸造技術を利用してワイン造りをスタートさせたため、戦後までは杜氏がワインの醸造に参加していたそう。"樹齢が高くなると、ブドウが土地に馴染んでくる"という信念のもと、通常30年前後で更新されるワイン用ブドウの木も、できるだけ長く生きてもらえるように大切に手入れをしています。そのため100年を超える古木も健在。現在は自社農園では除草剤を使用せず減農薬に取り組み、可能な限り有機肥料を使用した栽培をおこなっています。醸造も担当している高井麻記子(たかいまきこ)氏は5代目で、伝統を守りつつ、日本のワイナリーには珍しいブドウの搾りかすを使った「ジャパニーズブランデー」をいち早く取り入れたり、たこ焼きに合うスパークリングワイン「たこシャン」をリリースしたりと、老舗だからこそできる新しい試みを続け、注目されています。

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カタシモワイナリー

[名称]カタシモワイナリー/カタシモワインフード株式会社
[住所]大阪府柏原市太平寺2-9-14
[ワイン販売住所]大阪府柏原市太平寺2-7-33
[ワイン販売営業時間]平日:10:00~18:00/土・日・祝:10:00~17:00 
※年中無休(正月休み除く)
※詳しくは、カタシモワイナリーのウェブサイトまたはワイナリーまでお問い合わせください。

[概要]かつて日本一のブドウ生産量を誇った大阪で1914年から続く由緒あるワイナリー。日本酒の醸造技術を利用してワイン造りをスタートしました。戦後までは、杜氏がワインの醸造に参加していたそう。ワイン造りでこだわっていることは、健康なブドウを育てることと、蔵内の衛生管理を大切にすること。樹齢が高くなると、ブドウは土地に馴染んできます。通常、ワイン用ブドウは30年前後で更新しますが、古い木を大切に、できるだけ長く生きてもらえるように手入れを丁寧におこなうことで100年を超える木も健在しています。ワイナリー敷地内では、国の登録有形文化財に指定されている貯蔵庫や、柏原市指定有形民俗文化財に指定されているワイン造りの歴史ともいえる明治~大正時代の醸造器具35点を見学することができます。

大阪の中心街に位置する、日本の都市型ワイナリーのはしりと言える存在。実はブドウ生産地にも近い『島之内フジマル醸造所』。

もともとは大阪でワインショップとしてスタートした『FUJIMARU』ですが、大阪エリアのワイン産地を守るべく、2010年から耕作放棄地となったブドウ畑の管理をするようになりました。『FUJIMARU』への耕作依頼はその後も増え続け、デラウェアを中心としたブドウ栽培は2ヘクタールを超えるまでに。当初は収穫したブドウを『カタシモワイナリー』に委託してワインを醸造してもらっていましたが間に合わなくなり、2013年に自らのワイナリー『島之内フジマル醸造所』を設立することになりました。大阪の中心街に造られたこのワイナリーこそ、日本の都市型ワイナリーのはしりと言える存在です。その後、さらに増え続ける耕作放棄地の管理や、ブドウの買い取り依頼に対応するため、東日本のブドウを受け入れるネゴシアン型のワイナリーを2015年に東京にも設立。食中酒として日常の食卓に寄り添ってくれる親しみやすいワインからは、農作物であるブドウの、生き生きとした繊細な味と香りが感じ取れます。

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島之内フジマル醸造所

[名称]島之内フジマル醸造所/株式会社パピーユ
[住所]大阪市中央区島之内1-1-14 三和ビル1F
[レストラン営業時間]12:00〜21:30(L.O.) 23:00(CLOSE) 
※火曜・水曜日定休

[概要]産地と造り手と消費者が一体になれるような場所を創るために、2013年、大阪のど真ん中にオープンした都市型ワイナリーです。1階がワイナリー、2階にはレストランが併設されている、世界的にも珍しいスタイルをとっていて、アクセスのしやすさからも人気になっています。「ワインを日常に」をゴールに掲げ、レストランではワイナリーで醸されたワインはもちろん、地元関西の食材を中心に使った、イタリアンをベースにした創作料理をスタンバイ。大阪産のデラウェアを使用して造った『大阪デラウェア 2020』など、近郊栽培の利点を活かしたワイン造りが進められています。また次の世代へワイン産地としての大阪を引き渡したいという想いから、長年育てられているデラウェアを中心にブドウ栽培を続けています。レストラン利用の場合、ワイナリー見学も随時可能(醸造作業中などで見学できない場合もあります)。

奈良県で初の醸造所。自然酵母発酵で、奈良のブドウを奈良でワインにすることを目指す『木谷ワイン』。

大阪と奈良の県境にほど近い奈良県香芝市で、2022年からワイナリーを営むのは醸造家の木谷一登(きたにかずと)さん。一大ブドウ生産地であるこの地域に根付くデラウェアなどを大切にしながら、自園での栽培も手がけています。自園では化学肥料、化学農薬を一切使わないブドウを使い、オレンジワインや、酸化防止剤無添加のワインも発売しています。発売しているワインは、全て自然酵母での発酵、無濾過です。「自然酵母を使うワインの方が、自分で造ってみておいしいなと思うことが多いので、自然酵母を使っています。ちゃんとしたレシピがあるというよりは、いろいろと菌が動いてワインができていく。そういったところが面白みのひとつだと栽培やワイン造りには、自己表現の部分でアートやダンスなどと共通する感覚があります。刻々と変化が訪れるところや、天候に対して自分がどうアプローチするかなど…。テロワールや自分の住んできた土地、自分の思想が全て反映されるものがワインなのだと思います(木谷さん)」。

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木谷ワイン

[名称]木谷ワイン/木谷一登
[住所]奈良県香芝市下田西3-219-1
[ワイナリー営業時間]ワイナリーにお問い合わせください。

[概要]奈良県香芝市出身の代表、木谷一登(きたにかずと)氏が「生まれ育った奈良の風土をワインという形に表現したい。そうしてできたワインを、奈良を愛する人に味わっていただきたい」という想いから2022年に設立した、奈良県初のワイナリー。京都大学大学院を卒業後、銀行に就職した木谷氏は、当時取引先だった大阪府柏原市の『カタシモワイナリー』のワイン造りを見たのをきっかけに一念発起。2016年より『カタシモワイナリー』でワイン用ブドウ栽培・ワイン醸造の研修を受け、2018年1月、"純奈良県産ワイン"を造るため、ワイン用ブドウ農家として独立。奈良県天理市の耕作放棄地を開墾、苗植えを開始し、2022年9月に醸造免許を取得しました。原料となるブドウの質にこだわり、大阪と奈良に有する自社畑では、除草剤を用いない草生栽培、減農薬、無化学肥料で栽培。醸造では、野生酵母で亜硫酸を極力使用しないワイン造りをおこなっています。日々、奈良の風土を表現してくれる品種や栽培方法を追究し、奈良の魅力を発信するモノ造りを目指しています。

日本ワインで、日本をもっと深く知る。
エリア別ワイナリーガイド

日本の感性と職人技を生かした名品が次々と誕生し、国内外の食通を惹きつけながら、進化し続ける日本ワイン。南北に長い日本列島の各地で栽培・収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された「日本ワイン」は、その地域の気候や品種によって性質もさまざまで、そのため多様性に富んだ味わいが特徴です。北は北海道、南は九州・沖縄まで。日本全国より、wa-syuが厳選した50以上のワイナリーをエリア別ガイドでご紹介します。

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ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材でご紹介!

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