シリーズ・日本ワインが生まれるところ。山梨『ルミエールワイナリー』にインタビュー!

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材で紹介。Vol.3は、山梨県笛吹市の『ルミエールワイナリー』。

日本屈指の老舗でありがなら、先鋭的なチャレンジも。日本ワインを牽引する『ルミエールワイナリー』。

"日本ワイン"の全てを、余すところなく見てきた『ルミエールワイナリー』。その歴史は130年以上前に遡ります。創設者の降矢徳義(ふりやとくぎ)は、もともと約900年この地を護っていた由緒ある家柄。江戸時代より、この地で盛んに栽培されていたブドウの畑を所有、観光農園も経営していました。維新後の政府の殖産興業の気運を受けて、明治18年(1885年)に、降矢醸造場(のちの甲州園、現ルミエールワイナリー)が設立。その少し前の明治10年に、山梨県がブドウ栽培とワイン醸造の勉強のために2人の青年をフランスに派遣し、日本での本格的なワイン造りがスタートしたので、『ルミエールワイナリー』の開設は大変早い時期であったことが伺えます。その後明治34年(1901年)には、花崗岩(かこうがん)を使用した地下発酵槽(現在の登録有形文化財「石蔵発酵槽(いしぐらはっこうそう)」)および地下貯蔵庫を完成させ、いち早く生産量の向上に成功。戦前・戦中には陸海軍、皇室の御用達となるなど、日本を代表するワイナリーへと飛躍していきます。

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よいワインはよいブドウから。果実を育てるのに適した、気候と地の利を生かして。

今回お話を伺ったのは、現・代表取締役社長の木田茂樹(きだしげき)さん。「降矢家はもともとブドウ農家だったので、日本でも黎明期にワイン造りに着手することができました。130年以上もずっと同じ場所でワイナリーを続けているということは、私たちの誇りです」と語ります。「戦後は農地解放を経て、所有していたブドウ畑は数ヘクタールを残すのみになりました。けれども結局は解放後も、同じ土地で同じ農家さんがブドウを栽培していることに変わりはありません。農家さんと良い関係を築くことで、農家さんの顔が見えるよいブドウが手に入り、よいワインを造ることができるのです。『ルミエールワイナリー』が位置するのは甲府盆地の東側で、雨が少なく水はけがよく、夜間と昼間の温度が差が大きいエリア。この気候条件によって、ブドウは糖度が乗るようになり、美味しいワインの原料になるのです。また、大消費地である東京が近いという立地条件も、山梨県のワイン産業が発展する一因となっています」。

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歴史の重みを感じさせてくれる"石蔵和飲(いしぐらわいん)"。120年前と同じ造り方のワインは、そのストーリー性とともに人気の銘柄に。

平成の世になり、平成4年(1992年)には甲州園から株式会社ルミエールへと社名を改称しました。「ブドウを作って発酵させて…という営みは、昔から全く変わっていないので、コツコツと地道に続けています。しかし消費者はどんどん変化しているのも事実。現代は商品にストーリー性のあるものや、こだわりが感じられるものでないと、なかなか売れない時代になっています。普通に美味しいワインを造るだけではなく、情報や付加価値を載せて発売していくというのは、昔と大きく違うところですね。登録有形文化財に指定されている"石蔵発酵槽"で造る"石蔵和飲"も、そういったストーリー性が生きている銘柄です。石蔵発酵槽が建設されたのは1901年で約120年も前ですが、地熱で温度が一定に保たれていたり、地下水が流れているので冷却効果もあったりで、非常に良くできています。一時期は使用を中断していたのですが、文化財に指定されたことを機に、建設当時のやり方でワインを造るプロジェクトをスタート。竹のすのこを使うという、世界でも類を見ない製造方法で造ったワイン"石蔵和飲"は、大変好評を得ています(木田さん)」。

石蔵和飲 2020/2,530yen(税込)

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海外のワインを愛飲していたワイン通も刮目する美味しさ。甲州のスパークリングワインは、今やワイナリーを代表する存在に。

近年『ルミエールワイナリー』は、スパークリングワインを手がけ始めたことでも話題となりました。リーズナブルで美味しいスパークリングワインは、フランスのシャンパーニュにも匹敵するような美味しさとも評され、数々の受賞歴もあります。海外のワインしか認めない、と語っていたワイン通が、このスパークリングを飲んですっかり日本ワインのファンになった、という例もあるほどです。「スパークリングワインを造り始めたのは2008年ごろ。その頃はまだ、日本ワインの知名度も低く、甲州ブドウのワインがそれほど売れていなかった時代でしたが、甲州ブドウの特徴を活かしてなんとか良いワインを造ろうと試行錯誤していた中で、試しにスパークリングを造ってみたところ、非常に美味しいものができたのです。本場のシャンパーニュでは、まだまだ糖度が上がる前の早摘みのブドウを使ってベースワインを造り、それを瓶内二次発酵させることが多いのですが、甲州ブドウはもともと、それほど糖度の高いブドウではありません。だから甲州の場合はじっくりと成熟させてから収穫して、そこからベースワインを造ると、ちょうど美味しいスパークリングに仕上がることが判ったのです(木田さん)」。『ルミエールワイナリー』のこの挑戦は、甲州ブドウのポテンシャルを引き出し、日本固有種の"甲州"を世界にアピールするきっかけになったと言えます。

写真左から:
スパークリング 甲州 2018/2,970yen(税込)
トラディショナル スパークリング KAKITSUBATA/5,280yen(税込)

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ジャイロパレットも導入し、手作業だったピュピトルでの作業を効率化。美味しいスパークリングを、より手に取りやすいものに。

「瓶内二次発酵ワインは、造るのに手間がかかります。ベースワインを瓶詰めしたら、ルミアージュ(瓶を逆さまにして日に何度か回転させ、澱を瓶の口に溜めること)しなければなりません。今でこそスパークリングワインは『ルミエール』の主力商品となっていますが、最初の頃は数も少なかったので、ピュピトル(澱下げ台)を使ってすべて手作業でビンを回していました。それが、生産量が1万本、2万本と増えていくに従って、もう限界だ、ということになり…。海外に視察に行ってみると、フランス・シャンパーニュでもみんな"ジャイロパレット"という機械を使って、自動で澱下げの作業をしている。これはいい、ということで導入しました。24時間働いてくれるので、大変楽になりましたね」。まるで人間が手で回しているように、時折くるりと回るマシンはどことなくユーモラスで、機械でありながら温もりを感じさせてくれます。現在は濃厚な樽発酵樽熟成の"カキツバタ"や、赤ワイン用ブドウ品種から造る白いスパークリングワイン"ブラン・ド・ノワール"など、さまざまなタイプのスパークリングに挑戦している、と木田さん。「さらに、甲州を醸し発酵させたのち、瓶内二次発酵させたオレンジワインのスパークリングタイプにもチャレンジ。これはあえてコルクではなく、王冠を使っているんです。実はコルクを使うと、大変コストがかさんでしまう。美味しいスパークリングを、より気軽に楽しんで欲しいので、価格を抑えています」。こうして、ルミエールのヒット商品が次々に誕生したのです。

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日本固有種に加えて、欧州種、珍しいアロマティック品種も。ブドウ栽培へのチャレンジも続く!

古くからこの地で栽培されている甲州ブドウや、マスカット・ベーリーAといった日本固有種はもちろんですが、さまざまなタイプのブドウ栽培にも取り組んでいる『ルミエールワイナリー』。自社農園では、雑草を生かした「草生栽培」、人工的に耕さない「不耕起栽培」による土づくりをしているのもこだわりのひとつです。雑草を増やすことにより多種の生物が共存する環境「生物多様性」が守られ、たくさんの動植物が生命を営むようになります。そのため、地上では虫によるブドウへの食害が減り、地下では水はけのよい柔らかい土壌が作られるようになります。
「日本でも作っているところが非常に少ない珍しいブドウ品種として、"ミルズ"の栽培もしています。ワインにするとライチ系の味わいや、バラのような香りがするというのが特徴のミルズ。他の葡萄にはない独特の香りと味わいがあるので、こだわって作っているんです。人気の『プレステージクラス ミルズ』は、鶏肉、豚肉系との相性がよく、ハニーマスタードなどのちょっと甘めのソースが合います。単体でも楽しめるので、食前に冷やして飲んでもよいと思います(木田さん)」。

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日本ワインをもっと身近に、面白い存在に。日本ワインのスポークスマンとしての役割を担って。

現在は、山梨県ワイン酒造組合の副会長を務める木田さん。やまなし大使や、山梨県ワイン酒造協同組合の理事長、山梨ワイン海外輸出プロジェクト「Koshu of Japan(KOJ)」 の委員長なども歴任しています。そんな木田さんは「ともかく日本ワインをもっと気軽に飲んでみて欲しい」と語ります。「2007年ごろから、山梨大学がワインの専門家"ワイン科学士"を育てるコースを設置するなど、若手の醸造家の育成に取り組みはじめました。山梨県のワイン酒造組合、文科省、大学がタッグを組むことで、よりワイン産業が発展するようになったのだと思います。さらに山梨のワインは、2013年にワインとして初めて地理的表示制度により「GI 山梨」の指定を受けたことで、世界でもアピールできる存在になりました。事実、ロンドンの見本市でも『ルミエールワイナリー』の日本ワインは、高い評価を得ることができたのです」。こうして世界でも認められるようになった日本ワインですが、昔のフランスワインのように"勉強しないとわからない、飲めない"といったものではない、と木田さんは語ります。「ここ山梨県では、昔から一升瓶に入れたワインを、車座になって湯飲みで飲むという文化がありました。実際に、飲み口が軽めで爽やかな甲州などは薄いグラスで飲むのも良いですが、あえて湯飲みで飲むと飲みごたえが出て美味しいので、私もよくやるんですよ。夏は爽やかに、氷を入れて飲むこともある。そんなふうに、自由に楽しむことができるのが、日本ワインの良いところでもあると思うのです」。

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ルミエールワイナリー
山梨県笛吹市一宮町南野呂:(株)ルミエール

ルミエールワイナリー(Lumiere Winery)は、山梨県笛吹市で代々続く老舗で、大正時代には宮内庁御用達となった由緒あるワイナリーです。明治18年(1885年)、降矢徳義(ふりやとくぎ)が甲州園(現在のルミエール)の前身となる降矢醸造場を創設。その後、大正7年に皇室御用達となり、昭和2年には昭和天皇御即位の御大典祝賀用に採用された歴史があります。創業時から「本物のワインを造るには、本物のブドウを育てること」をモットーに、ワイン用ブドウの栽培を続け、自社農園では雑草を生かした「草生栽培」、人工的に耕さない「不耕起栽培」による土づくりをしているのもこだわりの一つ。雑草を増やすことにより多種の生物が共存する環境「生物多様性」が守られ、たくさんの動植物が生命を営んでいます。そのため、地上では虫によるブドウへの食害が減り、地下では水はけのよい柔らかい土壌が作られます。1998年に国登録有形文化財に、2018年には日本遺産の構成要素に認定された「石蔵発酵槽(いしぐらはっこうそう)」でも有名。明治34年(1901年)に"日本のワイン王"と呼ばれた実業家・神谷傳兵衛(かみやでんべえ)氏の指導を受け、扇状地の傾斜を利用した日本初のヨーロッパ型横蔵式地下発酵槽で、現在も使用されています。

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