岩手県を次なるワイン産地に。ふるさとの復興のために戻ってきた家族が目指す、"やさしくなれるワイン"を造る物語。
岩手県大船渡市の注目株ワイナリー『THREE PEAKS(スリーピークス)』は、2018年に設立。受賞歴のあるシードルや、地元で栽培されたブドウで造ったワイン、地元の漁師さんとのコラボシードルなど、個性あふれる銘柄で頭角を現しているワイナリーです。ワイナリーの代表であり醸造家の及川武宏(おいかわたけひろ)さんは、大船渡出身。東日本大震災を機にUターンでふるさとに戻り、このプロジェクトをスタートさせました。「大船渡市は人口35,000人くらいで、人口も減りつつあります。昔から「この地でどんな事業ができるだろうか?」とずっと考えていたんです。25歳の時にニュージーランドに一年ほど行く機会があって、そのときにワインやワイン事業というものに始めて触れて。農業から製造業、観光業まで網羅できる産業なのだということを知りました(及川さん)」。そのあとは都内の監査法人で働いていたという及川さん。忙しい毎日を送り、結婚をして家も構え、いったんワインからは離れていましたが、何か事業をやって地元を盛り上げたい…という漠然とした想いは続いていたそう。そんな折りに起こったのが、あの震災。「いつかは地元に戻りたいなと考えていたのに、その地元がなくなってしまった。改めて自分に何ができるか、何が復興になるのかを考えたときに、やはり事業を興さなければ、という想いが強くなったんです(及川さん)」。
写真左から:
崎浜ヤンキーシードル 限定ラベル Deep OCEAN[375ml]/1,980yen(税込)
崎浜ヤンキーシードル 限定ラベル Pinky ANNIVERSARY[375ml]/1,980yen(税込)
りんご屋まち子のアップルシードル/2,530yen (税込)
りんご屋まち子のアップルシードル[375ml]/1,540yen (税込)
Chardonnay 自畑のぶどうで造る大船渡ワイン/6,9490yen(税込)
スパークリング REGALO 2021 シャルドネ/3,410yen(税込)
REGALO 2021 シャルドネ/3,080yen(税込)
REGALO 2021 ナイアガラ/2,310yen (税込)
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地元の復興を考えたときにまず思いついたのは、ワイナリーの設立だった。そして、東京での生活に別れを告げて新たな世界へ。
「地元のために何ができるかと考えたときに、以前から漠然と考えていた"ワイナリーを造りたい"という気持ちがフツフツとわき上がってきたんです。ワイン産業は、食とも密接に結びついていますよね。ここ大船渡は、アワビやサンマ、ホタテ、カキなどの海産物がたくさん獲れます。そういった魚介類にも合うようなワインがあったら、ますます盛り上がるんじゃないか。ワイナリーに足を運んでくれる人も出てくるんじゃないか…。そんなことを考え出して、気づいたら行動に移し始めていました(及川さん)」。とはいえ、全く経験がないところからのスタートだったという及川さん。「2013年くらいから準備を進め、2014年には地元に移り住みました。それまで何の経験もないので、事業を進めながら岩手県内のワイナリーに通い、醸造や栽培を学ばせていただいて。数年間はリンゴ園を借りて育てたり、ブドウを植樹したりしながら農業主体でやっていき、その後は委託醸造でシードルやワインを造りながら、やっと自社工場が2018年にできて。当時はともかく夢中でしたね(及川さん)」。
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ワイナリーの設立場所は、もともとは街の中心地だったところ。大きな被害によって一時は何もなくなってしまった場所が、復興商業エリアとして復活。
及川さんが地元に戻ってきた2014年当時、津波の被害で流されたところには、まだほとんど何もなかったといいます。「現在ワイナリーがあるこの場所は、もともとは大船渡の中心街だった地域ですが、市内でも最も被害が大きかったエリアのひとつなんです。子どもたちの学校の校庭にもまだ仮設住宅があり、
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岩手県の中でも温暖な大船渡。三陸版"リアス・バイシャス"を目指して、アルバリーニョにもチャレンジ中!
「自社のブドウ畑は、ワイナリーから3〜4キロほど内陸に入っていったところにあります。休耕地を畑にしていて、今はシャルドネが一番多いですね。あとここはリアス式海岸だから、スペインの"リアス・バイシャス"のように、アルバリーニョを主体にしていけたらいいなと思って、今増やしつつあります。もともと大船渡には、果樹栽培をしているところはなかったのですが、お隣の陸前高田市の大船渡寄りのエリアでは、リンゴ栽培がさかん。140年くらいの歴史がある地域でリンゴ園を借りて、今はフジを作っています。私たちの畑は、標高は高くないけれど、若干小高い丘になっているところで日当たりは非常にいいんです。土壌は表層は粘土質で花崗岩が多い。底のほうはセメント工場があるくらいなので、石灰質。さらに、昔ながらのやり方で海の利点を生かし、海で採れる蛎殻の石灰を撒いて、phを調整しています。気候は岩手のなかでも暖かく、雪はほとんど降らないので環境はいいですね。若い頃、一度は出て行った土地ではありますが、子供たちと自然と過ごしたり、楽しみがたくさんある土地だなと、今になってしみじみ思います」と及川さん。
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両親や子どもたち、家族の力があってこそのワイナリー。リンゴとブドウの栽培を、丁寧に手作業で。
「両親はワイナリーの設立を準備している時からリンゴ園を手伝ってくれているんです。リンゴは、生食用の栽培方法だとどうしても甘く甘くとなってしまうのですが、お酒にする場合は酸がすごく大切。そのバランスがしっかり保たれるように、過剰な摘果をしないとか、ある程度実をつけてあげて、糖があがり過ぎず、酸度が抜けきらないタイミングで収穫するなどの微調整をして、美味しいシードルのための果実を得るように工夫しています。また自分たちでやっているので、手をかけることで消毒などもなるべくせずに済ませられます。ブドウも全部手作業で、一本一本管理しています。ともかくワインもシードルも、原料がものすごく大事。収穫後も選果をあらためてひとつ一つやって、カビ果、腐敗果はすべて取り除いて、ブドウもリンゴもキレイな状態で搾汁までもっていく。手間はかかりますが、家族総出でやっています。子どもたちも収穫を手伝ってくれるんです(及川さん)」。そんな家族の力を象徴する銘柄が「りんご屋まち子のアップルシードル」シリーズです。「まち子というのは私の母。リンゴ園を引き受けて、本当に丁寧に造ってくれています。まち子の作ったリンゴなので、その名を冠したシードルをリリースしました。リンゴを丁寧に洗浄し低圧で絞り、低温で時間をかけて発酵。澱引き・ろ過の後、瓶内二次発酵をさせています(及川さん)」。
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一つのものをつくるために、家族や地域で協力しあっているのが強み。岩手を、シードル、ワインの新しい産地として盛り上げていきたい!
「両親と家内、3人の子どもたちと、協力しあってもの造りができているのは強み。それに、家族と長い時間いられるのもうれしいですね。東京にいるときは、1カ月に1回家族と会えるかどうか、という感じだったので…。『REGALO(レガーロ)』というシリーズは、その年おすすめのブドウを選んで仕込むのですが、ラベルは、ワイナリーの3人の子どもたちが"REGALO(スペイン語で贈り物の意)"を運んでくるイラストなんです。こういう形で子供の成長も感じられて楽しいです!」と及川さん。「さらに地域ぐるみでの協力体制も、シーンを盛り上げるためには必要だと実感しています。コロナ前には、岩手県の複数のワイナリーと共同でイベントもしていました。ブドウ畑にワインを持ち寄って、食事と一緒に楽しむといった内容で、すごく盛り上がったんですよ!今後も、"ワインツーリズム三陸"を企画していて、4〜5社のワイナリーで協力体制をとって実行する予定。岩手県内のワイナリーさん同士はすごく仲が良いんです。今、岩手全体でワイナリーは15〜16件になり、どんどん増えています。岩手県は行政としてもワイン関連事業を応援する気運がありますし、老舗ワイナリーさんがいろいろと面倒を見てくれたりするのもありがたいですね。大船渡の復興をもっとすすめて、さらに岩手県を美味しいワイン、シードルの産地として盛り上げていきたいです(及川さん)」。
THREE PEAKS(スリーピークス)
岩手県大船渡市大船渡町:(株)スリーピークス
THREE PEAKS代表の及川武宏(おいかわたけひろ)氏が東日本大震災から約3年後の2014年1月、生まれ育った岩手県大船渡市に移り住み、「三陸に100年続く新しい文化を創造する」という壮大な夢を持ってスタートした家族経営のワイナリー。三陸沿岸地域をワインの産地にし、国内外から多くの観光客を迎えたい。大きな夢も小さな一歩からということで、大船渡市、陸前高田市で土地を耕し、ヴィンヤードを始めました。また、陸前高田市でリンゴ園を譲り受け、岩手県で最も古い140年以上の歴史を誇る陸前高田市の米崎リンゴをはじめ、10数種類のリンゴを育てています。2015年に販売を開始した「りんご屋まち子のアップルシードル」を中心に、多彩なラインアップを展開。「"やさしくなれるひととき"を過ごしていただきたい」。その想いを大切に、家族みんなでリンゴとブドウを栽培し、岩手県の自然豊かな風景を感じられるシードルやワインを目指しています。
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ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。
日本ワインで、日本をもっと深く知る。
エリア別ワイナリーガイド
日本の感性と職人技を生かした名品が次々と誕生し、国内外の食通を惹きつけながら、進化し続ける日本ワイン。南北に長い日本列島の各地で栽培・収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された「日本ワイン」は、その地域の気候や品種によって性質もさまざまで、そのため多様性に富んだ味わいが特徴です。北は北海道、南は九州・沖縄まで。日本全国より、wa-syuが厳選した40以上のワイナリーをエリア別ガイドでご紹介します。
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