造り手と飲み手との近しさで、完全都市型が個性的に進化!東京都のワイナリー

大都会・東京で、食と関わりながら飲み手目線のワインを造る"アーバンワイナリー"。小規模ならではの柔軟な発想や自由な原料選びが、新しい美味しさに!

東京にワイナリー? と、驚かれることも。都市型ワイナリーの世界的なトレンドが、日本にも!

N.Y.やロンドンなどの大都市で、いまホットなのが"都市型ワイナリー"の存在。畑のそばではなく、ワインの大消費地のそばで、飲み手のそばでワインを造る…。そんな醸造所が世界的なトレンドとなっているのです。コーヒーやチョコレートのように、出所のわかる原料を、消費者にわかるかたちで目の前で形にするクラフト感覚のウェーブが、日本ワイン界にも訪れているようです。その都市型ワイナリーの日本代表とも言えるのが、東京エリアのワイナリー。わずか10坪のビルを活用した醸造所や、レストランを併設したところなど、個性的なスタイルのワイナリーが進化を続けています。

写真左から:
深川ワイナリー東京/【お神輿ラベル】山形県産ナイアガラ オレンジ スパークリング 2022
清澄白河フジマル醸造所/Farmer’s Cabernet Sauvignon City Farm 2019
BookRoad ~葡蔵人~/アジロン 2022
東京ワイナリー/山形県高畠町デラウェア 2021

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実は東京はワインの好適地? 都心ならではの意外なメリットも!

東京に存在するワイナリーは、平成30年時点で4つ(国税庁調査分による)。そのうちの3つは、東部のいわゆる下町エリアに位置します。畑がほとんどない下町では特に、同じ地域で栽培したブドウをその場で醸造…という"ドメーヌ"的な経営はほぼ不可能。材料の調達は他府県に頼らざるをえません。しかし、都市型ワイナリーには大きなメリットもあります。それは大消費地の中に醸造所を置くことによって、飲み手との密なコミュニケーションが図れ、ニーズも把握しやすいということ。また、食のトレンドがいち早く入ってくる東京なら、それに合わせたワインの動向も素早く察知することができます。さらに、日本一のブドウ栽培地・山梨県に近く、山形県からも比較的原料を輸送しやすいという、東京ならではの立地の良さもあります。天候や栽培の出来・不出来に左右されず、その年にいちばん欲しいブドウ原料を、欲しい産地から選んで調達することができる…。そんなメリットを、東京のワイナリーは持っているのです。その他にも、ビンによる輸送のリスクが少ないなどの利点も。レストランとの併設ワイナリーでは、食と合わせて、タンクらか直に注いだワインを味わえるという楽しみもあります。

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工夫を凝らしたマイクロワイナリーが集まる下町エリアと、農業や酪農が残る城西エリア。東京の意外な顔も、ワインと共に楽しめる!

東京で最初にワインの醸造免許を取得し販売を開始したのは、練馬区の『東京ワイナリー』で、2014年のことです。その後、2015年には江東区の『清澄白河フジマル醸造所』、2016年には江東区『深川ワイナリー東京』、2017年には台東区『BookRoad(ブックロード) ~葡蔵人~』と、城東エリアに相次いでワイナリーがオープン。同じ東京23区内でも、かなり異なる環境で営まれるワイナリーですが、いずれも小規模なためワインの生産本数も限られており、入手が難しい銘柄もあります。wa-syuでは、この"東京ワイン"の黎明期を支えた4つのワイナリーの銘柄を取り扱っています。

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ブドウの受け入れによって農業を支援するネゴシアン型アーバンワイナリーが、大阪から東京へ。『清澄白河フジマル醸造所』。

東京・下町の住宅街にひっそりと姿を現す『清澄白河フジマル醸造所』。2階がレストラン、1階が醸造所となっており、こだわりの食に合わせたフレッシュなワインが楽しめます。もともとは大阪でワインショップとしてスタートした『FUJIMARU』ですが、大阪エリアのワイン産地を守るべく、耕作放棄地となったブドウ畑の管理をするようになりました。『FUJIMARU』への耕作依頼はその後も増え続け、デラウェアを中心としたブドウ栽培は2ヘクタールを超えるまでに。始めは委託醸造でワインを造っていたのが間に合わなくなり、2013年に自らのワイナリー『島之内フジマル醸造所』を設立することになりました。大阪の中心街に造られたこのワイナリーこそ、日本の都市型ワイナリーのはしりと言える存在です。その後、さらに増え続ける耕作放棄地の管理や、ブドウの買い取り依頼に対応するため、東日本のブドウを受け入れるネゴシアン型のワイナリーを2015年に東京に設立。それが『清澄白河フジマル醸造所』なのです。食中酒として日常の食卓に寄り添ってくれる親しみやすいワインからは、農作物であるブドウの、生き生きとした繊細な味と香りが感じ取れます。

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清澄白河フジマル醸造所

[名称]清澄白河フジマル醸造所/株式会社パピーユ
[住所]東京都江東区三好2-5-3
[ワイン小売販売時間]11:30〜23:00
※月曜・火曜(祝日の場合は翌水曜日)定休日

[概要]街中ワイナリーだからこそできる「ワインのある日常」を提案。大都市ならではの交通網を活かして周辺産地から新鮮で良質なブドウを集める都市型ワイナリーです。1階はワイナリー、2階にはレストランと試飲ルームを併設。ワイン造りがブドウの個性を大切にするのと同じように、料理も日本の厳選素材を活かすべくイタリアンベースの料理を展開。レストランを利用すると、醸造所の見学もできます(醸造作業中などで見学できない場合もあります)。

東京で最初のワイナリー。農業もさかんな練馬区で、ブドウ栽培にもチャレンジ!『東京ワイナリー』。

東京で最初に醸造免許を取得した『東京ワイナリー』が位置する練馬区は、まだまだ昔ながらの畑や農地が残っています。『東京ワイナリー』のすぐそばには、23区内に唯一残る牛を飼う牧場もあるほどです。この地にワイナリーを設立したのは、醸造人の越後屋美和さんで、こだわりのワイン造りをほぼ一人でこなしています。もともと野菜の仲卸業で働いており、東京の美味しい野菜や果物と出会ったという越後屋美和(えちごやみわ)氏。この東京の農産物を広めるような活動をしたいと考え、ワイナリーを設立したそうです。手作り感にこだわったワインと、東京の採れたて野菜とのペアリングも、併設のカフェで提案。また、他県から仕入れたブドウによるワイン造りと並行して立ち上げたのが「ねりまワインプロジェクト」です。練馬区の農業者と協力し、区内の畑でブドウを栽培・収穫。地域ブランドワイン造りにも取り組んでいます。「現在日本ワインがブームになりつつある中で、日本ワインを知らない人にもまずは東京という身近なところから情報を発信することにより全国に多く存在するさまざまなワイナリーへ足を運ぶ人が増えていけばいいと思っています。海外のワインも安価で美味しいですが、最近の日本ワインも負けてはいません!日本の食を理解し、大事にすることはとても大切な事だと私は考えています(越後屋氏・オフィシャルHPより)」。

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東京ワイナリー

[名称]東京ワイナリー/株式会社HORIGO
[住所]東京都練馬区大泉学園町2-8-7
[ワイナリー営業時間]11:00〜17:00
※水曜(祝日の場合は営業)定休日

[概要]醸造人は越後屋美和(えちごやみわ)氏。東京の農業をもっと元気にしたい!と始めた「都内初」となる都市型ワイナリー。小さなスペースで醸造から販売までを行い、手造り感にこだわったワイン造りを続けています。また、東京の農産物を広めるような活動をしたいとの考えから、東京の野菜とワインを組み合わせた食の提案も勧めています。

舌の肥えた江戸っ子に支えられた味わい。バリエーションの多さも魅力!『深川ワイナリー東京』。

2016年にスタートした『深川ワイナリー東京』。水路が入り組み、まさしく下町といった風情のエリア・深川に位置するワイナリーで、気軽に立ち寄ってテイスティングや購入も可能です。醸造責任者の上野浩輔(うえのこうすけ)さんは、山梨大学工学部醸造学科を卒業後、滋賀で17年半、新潟で5カ月、ワインの醸造に携わってきたワイン醸造人です。通常の透明なろ過のワインのほか、にごった無ろ過のワイン、酸化防止剤不使用ワイン、瓶内二次発酵のスパークリングワイン、オレンジワイン、黒葡萄からつくる白ワイン、とさまざまなワイン造りに挑戦しています。下町・深川という土地柄から、築地や豊洲市場からの鮮魚も多く流通し、食材の仕入れを大切にする飲食店やスーパーも多いそう。そのため自ずと、お魚と相性のいい白ワインや、醤油ベースの煮物、すき焼き、鰻、焼鳥、ジビエ料理と相性のいい赤ワインが誕生するようになりました。また、近隣のスーパーのビル屋上で、プランターによる「深川産」ブドウ栽培もスタート。まだ収量は少なく、単独でワインを完成させることはできないので、酵母として他府県から仕入れたブドウに混ぜて使用する予定。また将来は完全深川産のワインを造りたいという計画も! そのほか、海中でワインを熟成させるプロジェクトや、姉妹ワイナリーとして『渋谷ワイナリー東京』や『大阪エアポートワイナリー』の展開もスタートするなど、さまざまなワインの楽しみ方を提案しています。

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深川ワイナリー東京

[名称]深川ワイナリー東京/株式会社スイミージャパン
[住所]東京都江東区古石場1-4-10 高畠ビル1F
[ワイナリー営業時間]月・火 ボトル販売:12:00~18:00/水~日・祝 ボトル販売&試飲:12:00~18:00
[レストラン営業時間]休業中
※詳しくは、ワイナリーにお問い合わせください。

[概要]「コト創りのワイン醸造所」としてワイン醸造を身近に見て・知って・体験してもらおうと、東京の下町、門前仲町に2016年オープン。"まるでブドウを食べているかのような"という表現にぴったりのワイン造りを目指した、地域密着型の都市型ワイナリーです。

わずか10坪。下町で愛されている、おしゃれな都市型ワイナリー『BookRoad ~葡蔵人~』。

『BookRoad(ブックロード) 〜葡蔵人〜』は、東京都台東区・上野御徒町にほど近い、下町情緒あふれるエリアに位置している、都市型ワイナリーの代表格。店頭での販売もおこなっており、オープンを待ってワインを買いに並ぶ人や、試飲に訪れる人などでいつも賑わっています。10坪ほどのビルを利用したワイナリーで、醸造を担当するのは須合美智子(すごうみちこ)氏。自らトラックを運転して山梨県などの契約農家から収穫したてのブドウを運び、すぐに醸造に入るなどで工夫を重ね、ヒット作を次々にリリースしています。時間があるときは店頭での販売もこなすという須合氏は「収穫のお手伝いや原料の運搬、醸造、瓶詰め、ラベル貼りまで、ワイン造りはほぼ一人。ビルは1〜3階をパイプでつなぐなど、工夫してワインを造っています」。消費者や飲食店などからは、直接ワイナリーとのコミュニケーションが可能だということもあり、高い信頼を得ています。また、もともとレストランのプロジェクトとしてスタートしたワイナリーだけに、食とのマッチングに対するこだわりも。ラベルは食とのペアリングを表現したもので、一度見たら忘れられないインパクトです。

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BookRoad ~葡蔵人~

[名称]BookRoad ~葡蔵人~/有限会社K'project
[住所]東京都台東区台東3-40-2
[ワイナリー営業時間]平日:12:00~15:00/土・日・祝:12:00~15:00 
[レストラン営業時間]レストランにお問い合わせくだい。 
[ワイナリー見学]土・日:11:30~/13:30~
※ワイナリー見学は、有料および完全予約制です。
※詳しくは、ワイナリーにお問い合わせください。

[概要]2017年、東京台東区で設立されたワイナリー。「葡萄と蔵と人が目に見えない道で繋がり、共に繁栄するという願いを込めて。ワインをより身近に感じ、ワインが繋ぐ縁を大切にしたい」との想いから、この名前と共にワイン造りをスタートしました。BookRoad(ブックロード)のワインは山梨県・長野県の契約農家さんと茨城県にある自社農園で育った国産葡萄100%の日本ワインです。都内で唯一、2年連続で「日本ワイナリーアワード」の三つ星を獲得。

日本ワインで、日本をもっと深く知る。
エリア別ワイナリーガイド

日本の感性と職人技を生かした名品が次々と誕生し、国内外の食通を惹きつけながら、進化し続ける日本ワイン。南北に長い日本列島の各地で栽培・収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された「日本ワイン」は、その地域の気候や品種によって性質もさまざまで、そのため多様性に富んだ味わいが特徴です。北は北海道、南は九州・沖縄まで。日本全国より、wa-syuが厳選した50以上のワイナリーをエリア別ガイドでご紹介します。

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ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材でご紹介!

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