シリーズ・日本ワインが生まれるところ。北海道『ドメーヌレゾン』にインタビュー!

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材で紹介。Vol.14は、北海道・中富良野の『ドメーヌレゾン』。

大自然の中で造るワインに魅せられて。『ドメーヌレゾン』の醸造&栽培担当・松島巧(まつしまたくみ)さんにインタビュー。

2019年より醸造を開始した、北海道・中富良野の『ドメーヌレゾン』。比較的新しいワイナリーでありながら受賞銘柄も多く、日本ワイン界でも注目の存在です。実はここは、現存する日本最古のワイナリーである山梨県『まるき葡萄酒』や、長野県『ドメーヌ・コーセー』と同系列のワイナリー。かつて『シャトー・メルシャン』で研鑽を積み、日本ワインの底上げに尽力した『ドメーヌ・コーセー』の味村興成(あじむらこうせい)さんが顧問を担当しています。「味村さんが栽培や醸造の指導をしてくださっていて、テイスティングもしています。ふだん遠隔でもいろいろ聞いていますし、1~2カ月に一度は実際に富良野に足を運んで、チェックしていただいています」と語る松島さん。「自社圃場の作付け面積は約25ヘクタールあります。ワインの年間の生産量は約8万本。一部の銘柄は購入したブドウでまかなっていますが、将来的には、自社のブドウのみでの生産を目標にしています。育てている品種は、ヨーロッパの醸造用品種。赤はツヴァイゲルトとピノ・ノワール、白はシャルドネ、ケルナー、ミュラー・トゥルガウ、ソービニヨン・ブラン、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、リースリング、オーセロワを栽培しています(松島さん)」。

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ともかく大事にしているのは土作りです。私たちの畑の土は、十勝岳からくる火山灰が含まれているのが特徴の若干の粘土質で、ブドウ栽培の適地というわけではありません。けれどもワイナリーの立ち上げから何年もかけて、土壌を活性化するということを心がけてきました。堆肥などの有機質の肥料を使い、土中の微生物がさかんに活動するような環境をつくるようにしています。

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「冬のあいだ、畑には1m以上雪が積もるので、ブドウは雪の中にすっぽりと埋まっている状態です。杭と誘引用の針金しか見えません。外気温がマイナス20度くらいになっても、雪中はマイナス10度以下にはならないので、雪の中のほうがむしろ暖かい。雪がブドウを守ってくれるんです(松嶋さん)」。

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"ヤギとつくるワイン"が、創業のコンセプト。ワイナリーを訪れる人にも愛される、サスティナブルな循環型農業のスタイル。

『ドメーヌレゾン』の大きな特長といえば、ヤギを飼うことで新しい循環型のワイナリーを目指していること。ヤギは現在13頭ほどを飼育、春にはたくさんの赤ちゃんヤギが生まれる予定で、ヤギ担当のスタッフもいるそうです。「ヤギたちにはブドウ畑の周りを歩いてもらって、下草を食べてもらいます。また、剪定した葉っぱとヤギのふんを混ぜて堆肥に造り替え、畑に戻すこともしています。また、ワインの絞りかすも乾燥させてヤギのおやつにしているんです。ヤギと共にワイン造りをしているので、ヤギたちの健康を考えて、栽培には除草剤は一切使いませんし、農薬も極限まで減らしています。健康に育ったヤギのミルクも有効活用、ソフトクリームやパフェで楽しめます。とかく、ワイナリーというと大人しか楽しめないものになりがちですが、ここは家族連れもヤギの餌やり体験やミルクやり体験などで楽しめるので、その点でもメリットが大きいですね。ラベルもヤギを描いていることで評判も良く、覚えてもらいやすくなっています(松島さん)」。

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収穫したブドウをより良い状態で、新鮮なうちに。充実した設備による醸造へのこだわり。

「醸造に関しては、自社圃場と仕込みをおこなうワイナリーとの距離が近い、というのは強みだと思います。育てたブドウを、醸造する方の目線もしっかり入れて、より良いタイミングで収穫。さらに収穫時から、カゴに詰めすぎないように、果実が潰れないようにして運び、新鮮なうちに仕込めるスケジュールを組んでいます。また、醸造時は仕込みの段階から、なるべく酸化させないように、空気に触れないようにと、ドライアイスを活用して、酸素を遮断する層を造っています(松島さん)」。

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「この写真の真ん中あたりに小さいザルがぶら下がっているんですが、ここに入っている白いものがトライアイスです。空気が溜まる場所には、こうやって至るところにドライアイスを吊り下げていて。炭酸ガスは下に下がっていくので、溜まったブドウに蓋がされるかたちで、こうして仕込みの時に少しでも酸化しないように気をつけています(松島さん)」。

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「またタンクに入れてからは、ドライアイスの替わりに、水に溶けにくいアルゴンガスを充填して酸化を防いでいます。さらに、醸造の過程で酵母を投入すると発酵が始まって温度が上がっていくので、高温になりすぎないように,温度管理を心がけています(松島さん)」。こうして出来上がったワインは、どれもフレッシュで果実本来の良さが表現されている味わい。受賞銘柄が多いのもうなずけます。「醸造や畑に関しては、これからもっと進化してゆけるはず。まだ新しいワイナリーですが、醸造機器の使い方も年々熟達してきており、クオリティーは年々上がっているという実感はあります。これからの変化もぜひ、見守っていただきたいと思います(松島さん)」。

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バックパッカーで世界を放浪、雪山でカントリーガイド…。変わった経歴を持つ松島さんが、北海道の大地に根を下ろすまで。

「実は、私はいわば偶然の縁でワイナリーの仕事に就くことになったんです。もとは奈良県の出身で、大学も経営学部。東京で就職したのですがあまり都会に馴染めなくて。スノーボードが好きだったので仕事を辞めて、ニセコに行ったのが北海道との出会いです。ニセコの雪山で10年くらいアルバイトをしたり、雪のない時期には東南アジアやインドなど、世界中をバックパッカーとして旅したりしていました。一年半くらいの間、ワーキングホリデーでオーストラリアに行っていたこともあります。実は、すごくお酒に弱いんです。ワインは美味しいなあ、とは思うんですが、本当にちょっとしか飲めない。仕事中のテイスティングも、すぐ酔っ払ってしまうので気をつけています。でも、オーストラリアに住んでいたころは、シェアメイトが元ワインバーのバーテンだったこともあって、マリアージュやブドウの品種の違いなどについて、生活の中で自然に覚えてきました。そこがワインとの出会いだったのかもしれません。英語を勉強して北海道に帰ってきたのですが、ニセコはすごく人が多くなったので、富良野のほうに移って来たんです。富良野ではラフティングのカメラマンやバックカントリーガイドなどをしている中で、ワイナリーでアルバイトがあると聞いて、偶然お手伝いをすることになりました。それが『ドメーヌレゾン』の初年度、2019年度の仕込み時期で、ワイナリーでの仕事がすごく楽しかったのが強く印象に残って。ちょうどコロナで観光のお客さんが減ってしまったタイミングでもあり、ワイナリーでしっかりと腰を据えて働きたいと思うようになったんです。富良野は四季が美しく、本当に良いところ。休みの日はスノーボードをしたり、温泉に入りながら大雪山系の景色を堪能したりできます。自然の中が大好きで、菌や生き物も元々好きで。ここは、それらを全て叶えてくれる環境だなと思っています(松島さん)」。

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ますます注目が集まっている北海道のワイン。その中でも、"富良野地区のワイン"を盛り上げていきたい。

「いま、北海道のワイナリーはちょっとしたブームのようになっていると思いますが、やはりその中心は余市。でも私はこの富良野のブドウは、他の地域に比べても、すごく香りが立っているなと個人的には感じています。現在富良野エリアには『富良野ワイン』『多田ワイナリー』と、うちの『ドメーヌレゾン』の3つのワイナリーがありますが、判らないことは教えていただいたり、情報交換をしながら、地域を盛り上げるべく頑張っています。私たちのワインのクオリティーが上がれば、もっと富良野地区が盛り上がってくれるかなと思いますし、地域に貢献する一助になればと思っています(松島さん)」。

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『ドメーヌレゾン』の人気銘柄を松島さんが解説! ワイナリーおすすめのマリアージュは?

写真左から:
メリメロ ルージュ/1,980yen(税込)
「マスカット・ベーリーAやヤマブドウが入っています。おでんや肉じゃが、ローストビーフ、ボロネーゼパスタとのペアリングがおすすめです(松島さん)」。
メリメロ ブラン/1,980yen(税込)
「ナイアガラをメインにブレンドしています。焼き鳥やタコのカルパッチョがおすすめですが、すごく合うと評判なのが、ココナッツのグリーンカレーなど、甘辛い系のエスニック料理です(松島さん)」。
ドルチェ ビアンコ 2021/2,310yen(税込)
「自園で取れたケルナーとリースリングを絞って冷凍し、解凍時に出てくる糖度の高い果汁を使って造った、クリオエクストラクション製法のデザートワインです。富良野産のメロンなど、フルーツと合わせるのがおすすめです(松島さん)」。
中富良野 ゲヴェルツトラミネール 2021/3,740yen(税込)
「自社圃場のゲヴェルツトラミネールです。栓を抜くたびに変化があるワインに仕上がってきています。最近はライチ香が立ってきて、ますます面白い状態。酢豚や、エスニック料理と合わせるとすごく美味しいです。またナッツ類とのペアリングもおすすめです(松島さん)」。
中富良野 ルージュ 2021/3,740yen(税込)
「ツヴァイゲルトとピノ・ノワールのブレンドによる赤ワイン。これはお肉系。スペアリブや、焼き肉とのペアリングを提案しています。北海道の赤なので、やっぱりライトな飲み口です。今はまだちょっと渋みも立っているので、1年くらい瓶熟が進んだ状態にも期待しています(松島さん)」。
【 ドメーヌレゾン×wa-syu】オレンジワイン 2022/2,530yen(税込)
「wa-syu別注ラベルの人気銘柄が新ヴィンテージで登場しました。山梨県産の甲州を使用、味わいは適度な厚みもあり、いろいろな料理との相性もよい逸品です。全体的に華やかな香りが立ちのぼり、さらに甲州ならではの少しスモーキーな香りも感じられるため、ベーコンの香りとも相性が良いです。中富良野の名産であるアスパラベーコンや、バーベキューなどもぴったりです(松島さん)」。
中富良野 ミュラートゥルガウ 2021/SOLD OUT
「2022年のジャパンワインチャレンジでプラチナをいただいたミュラートゥルガウ。和食、特に白身魚のムニエルや煮付け、アジの南蛮漬けなどのマリアージュがおすすめです(松島さん)」。
ケルナー 2019/SOLD OUT
「冬はマイナス10℃以上になる北海道でもしっかりと育つ、耐寒性のある品種「ケルナー」で醸造しました。マスカットやリンゴを想わせるフルーティーな香りと、ほどよいボディ感が心地よい辛口の白ワインです。北海道の気候によって生まれた酸は、ほどよくシャープな味わいを生み、全体のバランスを引き締めます。白身魚の寿司やカルパッチョなどの食事にも合わせやすい味わいです(松島さん)」。

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ドメーヌレゾン
北海道空知郡中富良野町:(株)Domaine Raison

北海道富良野エリア(中富良野/富良野)に40ヘクタールの自社圃場をもつ、持続可能なエネルギーの循環「サスティナブル」をモットーにしたワイナリー。人間と自然がともに共存できる環境を目指し、ヤギたちを放牧場で自由気ままに走り回らせています。ヤギが草を食べ、走り回り、排泄物が土の肥料となる。その畑で育った、本州では栽培の難しいドイツ系品種を中心に、冷涼な気候に適した12種類のブドウを原料とし、ワイン造りをおこなっています。北海道富良野エリアで育つブドウのワインは、酸味の生きた爽やかな味わいが特徴です。ワイナリーの敷地内には、ドメーヌレゾンが提案する「サスティナブル」を表現したワインを販売するブティックや、ヤギミルクを使ったソフトクリームやパフェ、スムージなどを味わえる「グリル&農家レストランやぎカフェ」が併設されています。カフェのテラス席からは、絶景の十勝岳を一望でき、ゆったりとした時間を楽しめます。また、北海道の広大な自然に広がるこだわりのワイナリー見学ツアーでは、非日常を体験することができます。

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ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材でご紹介!

 

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日本ワインで、日本をもっと深く知る。
エリア別ワイナリーガイド。

日本の感性と職人技を生かした名品が次々と誕生し、国内外の食通を惹きつけながら、進化し続ける日本ワイン。南北に長い日本列島の各地で栽培・収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された「日本ワイン」は、その地域の気候や品種によって性質もさまざまで、そのため多様性に富んだ味わいが特徴です。北は北海道、南は九州・沖縄まで。日本全国より、wa-syuが厳選した50以上のワイナリーをエリア別ガイドでご紹介します。

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