シリーズ・日本ワインが生まれるところ。新潟『フェルミエ』にインタビュー!
日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材で紹介。Vol.16は、新潟県新潟市『フェルミエ』。「子供のころから慣れ親しんだ土地で、海や砂の土壌を表現する日本のファインワインを造る」。ワイナリー代表、本多孝氏のその想いとは?
子供のころから慣れ親しんだ土地で、日本のファインワインを。栽培・醸造責任者、本多孝さんにインタビュー。
39歳のとき、いわゆる"脱サラ"でワイナリーを始めたという本多さん。ワイン好きが高じてワイン造りの道を選んだ、と語ります。「ワインを造りたいと思っても、やはり一歩踏み出すハードルは高いと思います。ただ私の場合は偶然、新潟に『カーブドッチ・ワイナリー』があり、そこで催されたワイナリー経営塾に参加する機会があって、それが新潟ワインコーストでワイン造りを始めるきっかけとなったのです。ワイン造りのノウハウはもちろんのこと、免許の取得や、ワイン用の原料ブドウの調達などのサポートもしていただいて、大変ありがたく感謝してもしきれません(本多さん)」。
元は証券会社のサラリーマンだった本多孝さん。
ブドウの持つ多様性に魅せられて。生まれ育った新潟ならではのブドウやワインを造りたいと、孤軍奮闘からスタート。
2006年に起業して、自分のワイナリーを立ち上げた本多さん。「いろいろなテロワールを比べた結果、この土地を選んだ…というわけではありません。私が生まれ育ち思い入れがあるこの地、新潟のワインを造りたかったのです。ブドウは同じ品種であっても、育った場所や環境で全く味が変わりますし、その土地ならではの味わいを表現したり、その年の気候を反映したりする。ワインが持つその多様性に魅せられて、新潟ならではのブドウやワインを造りたい、と思うようになりました。『フェルミエ』も取り組んでいるアルバリーニョ(後述)は"海のワイン"と称されますが、私も子どものころから、海で泳いではそのまま家に帰ってシャワーを浴びる、というくらい海を身近に感じていました。畑は2ha、品種はアルバリーニョ、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、ピノ・グリを栽培しています。今は4割は自園のブドウ、6割は購入ブドウなのですが、自園の割合を少しずつ増やしているところです。購入ブドウは、新潟の契約農家と、残りは北海道・余市の契約農家から購入していますが、なかなか手に入らない希少な品種もお願いして作ってもらってます。今は社員2人、アルバイトさんが2〜3人です。『フェルミエ』はワイナリーツーリズムにも注力しています。ワイナリーツアーやテイスティングをお楽しみいただけますし、レストランも併設していて、そちらではシェフが、新潟の味と『フェルミエ』のワインとのペアリングを楽しめるフレンチを提供しています(本多さん)」。
自然と向き合いながら、極力余分なものを使わない栽培、醸造を心がけて。
「ワイナリーを始めてみると、自然を相手にする仕事なので大変でした。大きな気象災害があったり、病気のリスクと戦ったり…。でも、ワイナリーの目の前の、アルバリーニョやカベルネ・フランを作っている海と砂のテロワールの畑では、2016年から化学農薬などを使用せず、サステイナブルな栽培方法に切り替えました。その他の畑でも、農薬などの使用は必要なときに限り、最小限の使用に留めています。除草剤は一切使用しません。『フェルミエ』は小さなワイナリーなので、基本的に畑も醸造も"対症療法"ができるわけです。人間も、風邪をひいたら"対症療法"として風邪薬を適量飲むけれど、健全な方であれば風邪の予防のために薬を飲んだりはしないですよね。ブドウに対しても同じような考え方で、気温や湿度、ブドウの状態を観察し菌が蔓延りそうなタイミングにのみ、防除(農薬散布)をおこないます。適時に効果的に(=必要最小量の農薬等の使用で)、全ての畑の防除は半日で終わらせます。草刈り、除葉、傘かけなども同じで考え方で、適時に必要な作業をおこなうようにしています(本多さん)」。
「発酵時の酵母の使用は、①野生酵母だけの場合、②培養酵母だけの場合、③野生酵母で発酵させてその後培養酵母を添加する場合、の3パターンがあります。これは"どういうワインを造りたいか"によって選びます。亜硫酸はほとんどの銘柄で使いますが、添加する量は非常に少なく、瓶詰めの時だけの使用に留めることが多いです。あくまでも、ブドウが育った土地の特性や、その年の特徴、品種の個性が現れるフェルミエが目指す良いワインを造ることが目的です。そのためのアプローチ方法として亜硫酸をどのように使用するか、それぞれのワインに合わせて決めています。"ビオワイン"や"自然派ワイン"を造ることがフェルミエの目指すところではありません(本多さん)」。
偶然から手に入れた、アルバリーニョ。今では、ブドウとの信頼関係が築かれて。
今ではアルバリーニョだけで、さまざまなバリエーションのワインをリリースしている『フェルミエ』。ワイナリーを代表するブドウ品種との出会いは、意外にも偶発的なものだったそうです。「僕がアルバリーニョを選択したわけではなく、たまたまカーブドッチさんが2005年の春に、『フェルミエ』のワイナリーの目の前の畑で、当時おそらく日本で初めてだったアルバリーニョを植えました。翌2006年に『フェルミエ』が始動するにあたって、カーブドッチさんのご好意により、その畑を買い取らせていただきました。当時、アルバリーニョは国内では他に栽培されておらず、果たして日本で育つのかどうかもわからず不安も大きかったのですが、このブドウと巡り会って現在の『フェルミエ』があるので、今となっては非常にありがたいことだと感謝しています。アルバリーニョを植えてから10年目の2016年ごろに、畑やブドウとの信頼関係が築けたように思いました。ブドウも人間と同じで、シーズンを通して体調を崩したり、いろいろなことが起こるんです。でも慌てて動かなくても、ブドウを信じて待てば必ず一定レベルのブドウを収穫できるという確信のようなもの、手応えを得ることができるようになったのです。ブドウを信頼できるようになってからは、目先の収量よりも長く続けるということを考えて、さらに"ブドウに優しく・土壌に優しく"という方向にシフトしていきました。病気にも強く、非常にミネラルがあって酸がしっかりしているアルバリーニョ。香りも清楚で品格があり、若々しい爽やかな早飲みワインとしても楽しめますし、樽熟成させた醸しのようなこともできて多様な可能性を持つユーティリティな品種、どんな造りをしても良いワインに仕上がってくれる、ありがたい存在です(本多さん)」。
『フェルミエ』が手がけた、wa-syu限定販売ワイン。赤は超レア品種を使用した『2021 カベルネ・ジャポネ アッサンブラージュ』!
「ドイツでは、カベルネ・ソーヴィニヨンとドイツの在来赤ワイン品種を交配させて、新しい品種ができないかという試みが何十年も前からおこなわれています。交配の結果4種類くらいの品種が市場に出てきていると思うのですが、そのなかの2つ、カベルネ・ドルサ(カベルネ・ソーヴィニヨンとドルンフェルダーの交配種)と、カベルネ・ミトス(カベルネ・ソーヴィニヨンとレンベルガーの交配種)を、北海道・余市の農家さんに栽培してもらっています。ドイツ系の品種なので、気温が高めの新潟ではうまく栽培できないのです。日本ではほぼ見ることのない2品種を、混醸もしくはアッサンブラージュ。発酵はステンレスタンク、樽で熟成。さらに新潟のカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドすることによって、奥行きを出しています。ある程度スパイシーさや果実感がしっかりとあり、存在感もある味わいなので、フランス料理でもスタンダードなお肉などのメインに合うと思います。なんといっても品種の希少性があるので、日本ワイン通の方もぜひ楽しんでみてください(本多さん)」。
【wa-syu限定】2021 カベルネ・ジャポネ アッサンブラージュ/7,480yen(税込)
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『フェルミエ』が手がけた、wa-syu限定販売ワイン。白は『2022 ケルナー 醸し』。
「100%北海道・余市産のケルナーを醸し、樽は使わずにステンレスタンクで皮ごと2週間ほど醸し発酵させています。ケルナーは、酸もしっかりしていて香りのポテンシャルも高いので、果皮を使った造りのワインを造ってみたいなと思い、今年初めてチャレンジしました。以前から取り組んで見たかったのですが、スタンダードのケルナーも完売してしまうのでブドウが足りなくて…。2022年は、このためにブドウを買い増ししました。結果的には、良い意味での、ひんやりとしたニュアンスが出ていて、落ち着いた感じ。中華料理とのペアリングも面白いかもしれません。果皮のタンニンもあるので、白ですが、お魚だけでなく肉料理もいけると思います。合わせる幅が広いのが特長のひとつです。ブドウの特長である香りにフォーカスして造った、wa-syu用の限定ワインですので、ぜひ、味わってみてください(本多さん)」。
【wa-syu限定】2022 ケルナー 醸し/5,500yen(税込)
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ワイナリーを代表する品種、アルバリーニョのバリエーションがすごい!
「アルバリーニョは、2箇所の自社畑で栽培しています。2022年ヴィンテージは、『エルマール アルバリーニョ』だけがワイナリーの目の前の海と砂のテロワールで、垣根栽培の畑です。香りのポテンシャルも高く、余韻もあってミネラル感も感じられる優良なブドウが収穫できます。それ以外は全て、新潟市・南区の、棚栽培の自社畑になります(本多さん)」。
アルバリーニョ マセラシオン 2022
「除梗破砕して野生酵母で皮ごと醸し発酵をしています。アルバリーニョのミネラル感や、香りの純粋さ、世界観を表現したかったのであえて樽は使用せず、果皮のニュアンスをキレイに引き出すことができるように仕上げました。香りは金木犀(きんもくせい)のようです(本多さん)」。
エルヴォルカン アルバリーニョ 2022
「例年、エルマールと同じ海と砂の畑のブドウを使用。海底火山だった角田山から吹き出した溶岩の地盤の上に砂が体積している土壌。ボルカン=火山のような、マグマのようなエネルギーにあふれた、という意味で、野生酵母発酵・亜硫酸塩無添加の造り。2022年ヴィンテージは、南区の棚栽培の畑のアルバリーニョを使用して同じ造りのものをおこないました(本多さん)」。
アルバリーニョ 2022
「除梗破砕して、ステンレスタンクで発酵・貯蔵したスタンダードな造り。南区の畑は、土壌が肥沃で棚栽培なので、『エルマール アルバリーニョ』と飲み比べるとかなり違いがでてきます(本多さん)」。
アルバリーニョ セレクシオン 2022
「棚の畑の中でも最良の区画のブドウだけをセレクトして造ったもので、370本限定。これは『エルマール アルバリーニョ』に近い感じ
のクオリティです。『エルマール アルバリーニョ』と『アルバリーニョ』、『アルバリーニョ セレクシオン』は、基本的に樽を使わない、スタンダードな造りのものです(本多さん)」。
エルマール アルバリーニョ 2022
「ワイナリーの目の前の海と砂のテロワールで、垣根栽培の畑から収穫したアルバリーニョを使用。2016年から化学農薬などを使っていない有機栽培のブドウです。香りのポテンシャルも高く、余韻もあって塩味やミネラル感も感じられる『フェルミエ』のトップキュヴェ。発酵・熟成はステンレスタンクを使用しています(本多さん)」。
アルバリーニョ パシフィカード 2021
「ビニールハウスの中で干して糖度を高めたブドウと、生のブドウそれぞれの果汁を混醸して、樽熟成。樽のニュアンスがあり、アルコール度数も高め。残糖感はそれほどありませんが、トロピカルな味わいや蜜っぽさが特徴の重厚な白ワインです(本多さん)」。
「『フェルミエ』の2つの畑から、いくつもの異なる味わいのアルバリーニョが生まれています。まだまだ日本では珍しいアルバリーニョを、これほどバリエーション豊富なワインに造り上げているワイナリーは本当に希少。ぜひ、味わってみてください(本多さん)」。
※左から3番目の画像はイメージです。2019ヴィンテージは完売しました。現在の取り扱いは、2022ヴィンテージです。
写真左から:
アルバリーニョ マセラシオン 2022/11,110yen(税込)
エルヴォルカン アルバリーニョ 2020/15,070yen(税込)
アルバリーニョ 2019/SOLD OUT
エルヴォルカン アルバリーニョ 2022/11,110yen(税込)
アルバリーニョ 2022/9,460yen(税込)
アルバリーニョ セレクシオン 2022/13,860yen(税込)
アルバリーニョ パシフィカード 2019/16,500yen(税込)
エルマール アルバリーニョ 2022/16,610yen(税込)
アルバリーニョ パシフィカード 2021/19,470yen(税込)
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ピノ・ノワールだけでも3種類。樽の違い、クローンの違いも味わえる珍しいシリーズ!
「ピノ・ノワールにおいてはブルゴーニュやカリフォルニアなど、世界各地の産地でもいろいろな種類のクローンが選択されていますが、他の品種でここまでクローンがクローズアップされることはないという気がします。『フェルミエ』では、ディジョン・クローン(ブルゴーニュのクローン)の中でも果粒が小さいピノファンに分類される、「115」「667」「777」の3種類を植えました。あわせて、ドイツで栽培されていたピノ・ノワール、即ちシュベートブルグンダーにもチャレンジしました。これらを同じ造りで醸造し、さらにそれを熟成させる樽を使い分けました。『ピノ・ノワール プルミエ クラッセ 2021』は100%新樽を使用、『ピノ・ノワール 2021』は新樽は使っていません。この2種類はディジョン・クローンのピノ・ノワールです。小粒なブドウなので凝縮した旨みがあります。一方、ドイツ系の『シュベートブルグンダー 2021』は大粒で大房、色も淡く優しいテイストです。時間が経つにつれて変化も楽しめるので、飲み比べると、違いがよくわかると思います(本多さん)」。
シュペートブルグンダー 2021/10,010yen(税込)
ピノ・ノワール プルミエ クラッセ 2021/15,290yen(税込)
ピノ・ノワール 2021/13,860yen(税込)
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フェルミエ
新潟県新潟市西蒲区越前浜:ホンダヴィンヤーズアンドワイナリー(株)
日本一の大河・信濃川が注ぐ日本海にほど近い海岸砂丘に位置する、ワイナリー。2005年当時、創業者・本多孝(ほんだたかし)氏が、新潟ワインコーストの発祥地「カーブドッチ・ワイナリー」の「ワイナリー経営塾」にて栽培・醸造・ワイナリー経営全般について学び、海と砂のテロワールが育む新潟の個性溢れるワイン造りを目指して、2006年に創業しました。「フェルミエワイン」とは、農家製のワイン(フランス語)を意味し、エレガントな香りと繊細で優しい味付きながらも旨味に溢れたワインを造り続けています。ワイナリーには、テロワールを尊重し、一皿一皿に愛情をこめて作る新潟の新しい発想のフレンチレストランも併設されています。料理とフェルミエの「ローカル」感を味わえる、ぬくもりあるレストランです。
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ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。
日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材でご紹介!
日本ワインで、日本をもっと深く知る。
エリア別ワイナリーガイド
日本の感性と職人技を生かした名品が次々と誕生し、国内外の食通を惹きつけながら、進化し続ける日本ワイン。南北に長い日本列島の各地で栽培・収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された「日本ワイン」は、その地域の気候や品種によって性質もさまざまで、そのため多様性に富んだ味わいが特徴です。北は北海道、南は九州・沖縄まで。日本全国より、wa-syuが厳選した50以上のワイナリーをエリア別ガイドでご紹介します。
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